通称『逃げ恥』
大学院を出ながらも就職難で派遣社員になった森山みくり(新垣結衣)は、いわゆる派遣切りに遭い、無職の身となってしまう。求職中の娘を見かねた父は、家事代行サービスを利用していた元部下・津崎平匡(星野源)が折りよく代行の会社を替えようとしていたところを頼み込んで、週1回の仕事を取り付けてくる。
気難しい性格で、あまり他人に構われることを好まない津崎だったが、みくりとは適度な距離感を保って良好な関係を築く。だが、定年を機に田舎へ引っ越すという願望を両親が叶えることになり、現状を維持したいみくりは津崎に「就職としての結婚」を持ちかけ、その提案にメリットを感じた津崎は了承し、2人は契約結婚という道を選ぶ。
第2話では、契約結婚がバレないように、普通の結婚をする振りのためにセッティングした親族同士の食事会のシーンから始まった。
無事に食事会を終えたみくりと津崎は帰り道でこんな会話をしていた。
「周りを説得する自信がないから、普通の結婚をする振りをするって、逃げと言えば逃げだし」
「逃げたっていいじゃないですか」
「えっ」
「ハンガリーにこういう諺があります。
逃げるのは恥。だけど役に立つ」
「役に立つ?」
「後ろ向きな選択だっていいじゃないか。
恥かしい逃げ方だったとしても生き抜くことのほうが大切で、その点においては、異論・反論を認めない」
「逃げるのは恥だけど、役に立つ」
「はい」
「そうですね。
逃げても生き抜きましょう!」
この二人のやりとりを見て、電通で過労死した高橋まつりさんのことを思い浮かべてしまった。
このツイートの5日後に、高橋まつりさんは会社の寮から飛び降り自殺した。
僕も二度、うつ状態になって死にたくなったことがある。
幸い、初回は自主的に、二度目は上司と産業医に促されて会社を休んだことで、自殺することはなかった。
だが、ひどい時は本当に毎日死にたかった。
どうやって死ねば楽になるだろう?ということばかり考えていた。
彼女もきっと逃げたかったんだと思う。
『逃げ恥』の森山みくりは大学院卒だけど、派遣社員にしか就職できず、しかも1年目で派遣切りにあった。
そして、津崎と契約結婚という形で見かけ上は専業主婦になって逃げた。
津崎は「逃げるのは恥だけど、役に立つ」と、みくりを肯定した。
高橋まつりさんには津崎のような存在がいなかったのだろうか。
また、津崎の同僚が自宅に押しかけ泊まることになった翌日に二人はこのような会話をしていた。
「眠れないほどの悩みですか?」
「いえ、お気になさらず」
「みくりさん」
「はい」
「僕はゆうべ反省しました。
知らなかったじゃ済まされないこともあります。
もっと周囲に目を配らないと。
職場というものは、従業員だけの努力じゃままなりません。
雇用する側も努力しないと。
僕は雇用主として、みくりさんが働きやすい環境を提供したいと思っています。
もし何か気になることがあったら、遠慮せず、何でも言ってください」
「ありがとうございます」
『逃げ恥』の津崎(星野源)が上司だったら『電通』の高橋まつりさんは自殺しなかったかもしれない。