明日の朝は走ろう!
と決意して眠りにつく
4時頃に目が覚めて
スマホの天気を見る
3℃と表示されている
かなり寒いらしい
毛布の温もりに包まれて
ぼんやりと二度寝する
冬の朝に毛布にくるまってるのは
極上の幸せだ
この幸せを手放して
寒空を走るのは相応の理由がいる
もう一度スマホの天気を見る
あと1時間で日の出らしい
そうだ朝焼けを見よう
僕は走り出した
朝焼けを見るために
まずは北へ向かう
暗いし寒いしすぐに後悔する
1kmを過ぎて小高い丘を登る
寒さで足があがらない
2kmで折り返してまた丘を登ると見えてきた
赤銅色の東の空
美しいグラデーション
朝と夜のグラデーション
宇宙と地球のグラデーション
丘を下ると建物で空が見えにくく
ときおり見える東の空
時が進むにつれ
赤銅色は蜜柑色に
ある華道家の言葉を思い出す
華道の魅力は”うつろい”である
ときおり見える空の”うつろい”は
僕の心に親密な暖かさを与えてくれる
5kmを過ぎ西へ向かう
しばし暖かな空と別れ薄蒼の空を目に走る
ゆるやかな登りが続く
タッタッタッタッと僕の足音だけが聞こえる
風が強くなり
刺すような寒さが手足をつらぬく
6kmを過ぎて公園に入る
木々が光を遮りわずかに夜を取り戻す
公園の草原を走る
ザッザッザッザッと小気味よい音
元気な声で体操をしている老人たち
その横をひっそりと走り抜ける
公園の端に立つ鉄のオブジェ
ひんやりとしたその身に触れ折り返す
東の空に向かって下る
グラデーションの空が広がる
グラデーションに映える
落葉したトチの並木のシルエット
トチの木のてっぺんに一羽のカラス
その横を飛び去るカラスを追いかける
僕も二羽のカラスを追いかける
しなやかに翔ぶカラスに追いつけるはずもなく
二羽のカラスはどんどん小さくなる
空はすっかり青くなり
グラデーションは雲の光に移っていた
あと1km快調にとばす
茂みからスズメが飛び出した
幸い事故もなく無事にゴール
熱いシャワーを浴びて僕の一日が始まる
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