僕のマンションのベランダの窓から古墳の森が見えていた。
駅前で人工物に埋め尽くされつつある一帯だが、古墳だから、そこだけは自然が残っていた。たぶん樹齢100年以上の木がたくさんあっただろう。鳥もたくさん住んでいた。
冬になると葉が落ち、春になると芽吹き、夏になると繁茂し、秋になると彩りが増えた。
キッチンで料理をしながら、子供たちが遊んだり、勉強する姿をみながら、季節を感じられる窓だった。
お気に入りの窓だった。
先週くらいに、古墳の木がどんどん伐られていった。
いまはすべて切り株だけになっている。
丸裸になった古墳を見るたびに、僕の心も丸裸にされているように感じてしまう。
さめざめと悲しくなってしまう。ぽっかりと穴があいたようだ。
スザンヌ・シマードは森はつながっているという。
木は根を張り、根っこの近くの菌が土中の養分を吸収しやすい形に変えている。
それらはFacebookの人のネットワークのように複雑につながり、マザーツリーと呼ばれる大木・古木が巨大な根を深々と広々と張り巡らし、様々なところへ養分を行き渡らせることで、若木の成長を助けているという。
ネットワークは堅牢で、1本や2本の古木を抜いてもすぐに回復するが、全てを伐り倒してしまうと、そのネットワークは壊滅的な打撃を受けてしまう。そう容易く回復はしない。また永い年月が必要となる。
僕の窓から見えていた古墳の森のネットワークは誰かの思惑でズタズタに引き裂かれてしまった。
そのことが、今後の僕にどのような影響を及ぼすのか、不安だ。
新たな森を見つけにいかなければいけない。
あなたの森はどこにありますか?