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古市憲寿「保育園義務教育化」を読んで、これからの保育について考えた

「保育園」について、はてなブログでも旬のトピックになってる。

 

そもそもの発端はこの匿名ダイアリー。

anond.hatelabo.jp

 

これに対して東京都議員のおときた駿さんが意見を述べている。

otokitashun.com

結論から言うと、保育所というハコモノ・施設でこの問題を解決することは不可能です。
ただでさえ土地がない・高い東京都で保育所を増設するのには、非常に高いコストがかかります。

じゃあどうするの?という点については、
小規模保育や派遣型保育・ベビーシッターの活用に舵を切るしかありません。

特に小規模保育は猪瀬知事時代に一定の補助スキームが確立されましたが、
派遣型保育・ベビーシッターに対しては未だにほとんど行政の補助がありません
基礎自治体が独自に行なっていることはあっても、東京都はほぼ無策)

では具体的にどのように施策を展開していくかというと、
保育所をつくる・運営するために出している補助金を、利用者側に転換していくだけ。

まるまる新たな財源を創りだす必要はありません。

 

また、おときたさんが言及した小規模認可保育所「おうち保育園」を運営するNPO法人フローレンス代表の駒崎さんがこの問題についてデータに基づき提言している。

www.komazaki.net

【実は保育所数は劇的に増えてるけど、待機児童は減ってない】

平成25年度あたりからグンと保育の拡大量が伸びました。

しかし、認可保育所に申し込む人が増えたこともあり、待機児童は減らせず、むしろ若干増えている、という状況なのです。

じゃあ、保育所をもっと増やせばいいじゃんという意見に対し、3つの壁があるという。それは、

①予算の壁
②自治体の壁
③物件の壁

まず、予算の壁。

保育士不足は保育士の処遇が低いことが要因です。
保育士給与は全国平均で月20.7万円。

続いて、自治体の壁。

自治体(と担当職員)からすると、園を増やそうというインセンティブよりも、間違いのない事業者を選別する方が強い動機となり、参入を抑制するのです。

さらに物件の壁。

それ(安全に運営するための基準)を満たしていて、かつ周辺住民が文句を言わず、かつ保育所としてペイする坪単価で、駅からの距離がそこまで遠くない物件というのは、非常に限りがあります。

そして、駒崎さんが提示する解決策は、

怒りましょう。

そして怒りを原動力に、行動しましょう。

政府に対しては、

保育士給与引き上げのための、予算増額の世論を高めることです。

自治体に対しては、

とにかく文句を言うべきです。

首長(市長や区長)と地方議員に。

ネットでも、リアルでも、あなたと共に何万人がやっていって、無関心な政治をこちらに向かせるしかありません。

 

ということで、僕も保育園問題に関心を持つようになった。

 

 

さらに、こんな投稿もあった。

anond.hatelabo.jp

認可保育園(要するに普通値段で安心して保育が受けられる保育園入園に失敗すると、利用料金が高額かつ環境劣悪な例も少なくない未認可園(「認証」という名目ではあるが……)に入れるか、奥さんが会社辞めて=キャリアを捨てて家で育てるかの事実上の二択を余儀なくされる。

この後、妊娠前から出産後まで、希望する認可保育園に入れるためにどれだけ苦労してきたかが綴られている。

都内で子育てをするってこんなに大変なんやと思った。

 

 

それから、図書館で保育関係の本を10冊ほど借りてみた。

なかでも、古市憲寿さんの「保育園義務教育化」という本が非常にわかりやすく日本の保育の問題を解説し、さらに古市さん流の解決策を提示している。

ちなみに古市さんは結婚してなくて子供も欲しいとは思っていないとのこと。そんな古市さんがこの本を書くきっかけとなったのは、椎名チカさんのまんが「37.5℃の涙 」だった。

「病児保育」という制度があることは知っていたし、その先駆けが友人の駒崎弘樹さんだということも知っていた。だけど、「37.5℃の涙  」を読んだ時、急に実感を持って「子ども」をめぐる世界の異様さに気づいたのだ。

 この本を書くにあたって、古市さんは56もの参考文献やオンライン記事を参考にしています。また駒崎弘樹さん、中室牧子さん、宋美玄さん、上野千鶴子さん、瀬地山角さんといった各界の著名人や、子を持つ友人から保育の実態や課題を聞いてもいる。

 

p34の太字の言葉が、日本の保育の状況を端的に表現していると思う。

現代の育児というのは、相当の「情報強者」か「経済強者」でないと務まらない

先の、「保育園の第一志望受かったけどやっぱり日本死ね」さんは「情報強者」だったから認可保育園に入れることができたのだろう。

認可保育園に入れなければ高額の認証保育園に預けるか、1時間あたり3,000円ほどするベビーシッターを雇わなければならない。

 

「2章 人生の成功は6歳までにかかっている」ではアメリカで行われた様々な社会実験のエビデンスを引用しながら、以下のポイントをまとめている。

  • 子どもの教育は、乳幼児期に一番お金をかけるのがいい
  • 良質な保育園に行った子どもは、人生の成功者になる可能性が高い
  • 意欲や忍耐力といった「非認知能力」が人生の成功につながる
  • 「非認知能力」は集団の中でこそ磨かれる
  • 夏休みの宿題がぎりぎりまでできなかった子どもは大人になっても計画性がない
  • 格差が広がる日本では、社会全体の「レベル」を上げるために就学前教育が重要

 

そして、「7章 0歳からの義務教育」で自らのアイデア「保育園義務教育化」のメリット、実現可能性について述べている。

 

まず、心理的な側面として、

「義務教育」と呼ぶことで、子どもを保育園に預ける時の「後ろめたさ」を感じてしまう人の、抵抗感を軽減できる 

クールビズ」のように「お上」からの命令であれば日本人は従いやすいという論調だ。

 

また、「保育園義務化はコスパがいい」として、

2章で見てきたように、教育経済学の分野では、「子どもの教育は、乳幼児期に一番お金をかけるのがいい」というのが定説になっている。

子どもの時に良質な保育園に入れる人が増えれば、その社会は犯罪者や生活保護受給者が減る。結果的に、「コスパ」がいいのだ。

日本では2010年度から高校授業料無償化が実施されている。同じように法案を通せばいいのだろう。

 

さらに、保育園義務教育化は世界的な潮流だという。 

フランスではすでに3歳からの保育園は無料だし、その義務教育化も検討されている。イギリスや韓国では、義務教育の年齢を5歳にまで引き下げている。

さらにハンガリーでは2014年から3歳から16歳までが義務教育となり、国が幼児期の子どもの発達に責任を持つことになった。

日本の政治家は「他国はすでにやっている」ことに弱い。こういった事実を突きつけることで説得力が増すだろう。

 

少子化なのに待機児童問題が解決しない理由として、東京大学教授で東大内で保育所の経営にも携わっている瀬地山さんに言質をとっている。

経営者の目線から言うと、大都市で保育園が不足する理由は簡単にわかるという。それは、単純に言えば「もうからない」からだ。 

「都市部では土地の値段が高い。しかも空いている土地なんてほとんどない。自治体が無理やり保育園を作ろうとしたら、公園や小学校をつぶすしかない」 

 

じゃあ、どうやって保育園を増やすか?それに対して古市さんはフローレンス駒崎さんの「おうち保育園」の発想を元にいくつかの提案をしている。

「園舎は原則2階建て」というルールを変えたらどうだろう。

さらに、 一定以上の従業員がいる会社(事業所)には、保育園を設置しなくてはならないというルールを設ける。

また、ビルを建てる際、保育園をビル内に設置すれば、容積率や建ぺい率などの制限を緩めるという決まりを作ればいい。

 どれも国会で法改正をすれば実現しそうだ。事実、フローレンスの「おうち保育園」の仕組みは2015年に改正された法律で「小規模認可保育所」という制度で実現している。

 

その後、「もちろん!保育園の質も大事」「保育士さんの待遇問題」「若者にお金を使わない国」「増税に見合うだけの安心を与えて欲しい」といった項でその他の課題や市井の声をあげている。しかしそれらの課題には解決策の提案がなされていないのが残念だ。

 

特に、保育士さんの待遇問題については税金でカバーするだけでなく、経営面で儲かる仕組みを考えていかないと持続可能なものにはならないだろう。

 

最後に、「社会は変わってきたし、変わっていく」という項で締めている。

 たとえば、ベビーカーをたたまずに電車に乗ってもいいのかという論争がある。実はこの論争はとっくに決着が着いている。

 国土交通省が2014年「ベビーカーでも折りたたまずに乗車することができます」という宣言を発表したのだ。そしてベビーカーは、車椅子と同じように、乗車に時間がかかったり、スペースを必要とすることに理解を求めている。

 だからあとは、JRなど鉄道会社が「電車はベビーカーでも折りたたまず乗車できます。お子さんのいるお客様に対するご配慮をお願いします」とアナウンスをガンガン流せば、本来は今すぐにでもベビーカー問題は解決されるはずなのだ。

 たぶん、ちょっとしたアイディアの積み重ねや、ちょっとした人の行動で、社会は変わっていく。

 そのうち「タイキジドーって何ですか」とキョトンとされる日も、必ず来るはずだ。

 

最後は希望を持たせる書き方だが、ちょっと他人任せな感じがした。

 

だから、待機児童を減らすアイデアを僕なりに考えてみた。

実はこのアイデアは以前からぼんやりと考えていたものだ。

 

保育士の待遇問題と同様の構造は介護士にも当てはまる。介護も重労働の割に給料が安くてなり手がいない。赤ちゃんと同じく痴呆症の老人の相手は言葉が通じなくて精神的にもしんどい。

 

だから、保育士と介護士不足の問題を一挙に解決する方法を思いついた。

 

それは、老人ホーム(あるいはデイケアセンター)と保育園を合体させるというもの。

さらに、学童保育を受けている小学生も同じ施設で見守る。

さらに、大学生の意識高い系サークルに呼びかけてボランティアで保育や介護をしてもらう。

 

そうすることで、一人の保育介護士が多くの子供や老人の面倒をみれるようになる。

もちろん、一人で全ての人を面倒みるのではなく、小さい子の面倒は小学生にもみてもらう。老人は大学生にもみてもらう。老老介護で疲れている高齢者が赤ちゃんをみて癒されながら介護の仕方を大学生に伝える。

それぞれが自分なりにできることをする。互助の精神だ。

 

保育介護士は国からの補助で保育士と介護士の資格を取得し、ファシリテーションコーチングなどの研修を受けさせて、より専門的な知識を獲得してもらうことで、一人でカバーできる子供や老人を増やす。そうすれば一人当たりの給料を上げることができるだろう。

 

まずは今の法律の範囲内で出来ることを考え、実績を作っていく。

そうして徐々に出来ることを増やしていき、認知度が高まれば政治家にも知られるようになり、やがて法律も変えることができるだろう。

 

そんなことがやりたいと思った。

 

まずは保育と介護のことをもっと知ろうと思った。