僕は普段ウイスキーをロックで飲まない。
ウイスキー本来のアロマやフレーバーを楽しむならストレートで飲むほうがいい。
ロックにすると揮発性の低い香り成分が感じられなくなる。
ストレートがきつい場合はトワイスアップというスタイルがいい。氷を入れない水割りだ。
常温でアルコール濃度だけが低くなり、時間が経っても香りが損なわれない。
ハイボールにすると炭酸のおかげで立ち上る香りというのを感じられる。ただし、氷が溶けないうちに飲み干さないと、時間とともに不味くなる。
とにかく僕はよっぽどのことがない限り、ウイスキーのロックは飲まない。
でも、たまに無性にロックで飲みたくなる。
それはムカついた時だ。
仕事で嫌なことがあったときや、
信用してた人から裏切られた時などだ。
そんな時にウイスキーのロックは合う。
種類はバーボンがいい。
「バーボンのロック」
バーのカウンターに座るなりぶっきらぼうに注文する。
銘柄は指定しない。
差し出されたバーボンのロックを一気にあおる。
ドンとグラスをカウンターに叩きつけ、
「もう一杯くれ」
バーテンダーは何も言わずに二杯目を注ぐ。
それを受け取り、今度はゆっくり時間をかけて飲む。
氷が溶けて不味くなっても気にしない。
そうすると緩やかに酔いが回り、すーっと怒りがおさまっていく。
そのようにして、僕はウイスキーのロックを飲む。