学びと食、ときどきランニング

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【TED】 デボラ・ゴードンのアリにかける情熱

Deborah Gordon "Digs Ants"

 砂まみれのショベルカーと日本製ペイントマーカー、そして数人の学生を従えて、デボラ・ゴードンがアリゾナ砂漠のアリコロニーを掘り起こし、アリの複雑な世界を探究する。

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組織がいかに作用するのか?

 

この問いを探求するためにアリのコロニーについての研究成果を報告。

 

コロニーは最初、羽のある処女女王アリと雄アリからスタートする。
雄アリは交尾した後、全て死ぬ。


交尾した女王アリは別の場所へ飛び、羽を落とし、穴を掘って中に入り、産卵を始める。
女王アリは交尾の際に蓄えた精子を使って産卵を続け、約15~20年生きる。


卵が孵って幼虫になると女王アリは蓄えてある脂肪を吐き出して幼虫を育てる。
育ったアリは地上へ上がり、食べ物を得て巣を広げる。
女王アリは2度と地上に上がらない。

 

最初は女王アリだけで、働きアリ0匹から始まり、5年ほどで1万匹くらいまで増加する。
その後は15~20歳になった女王アリが死ぬまでアリの数は変化しない。

 

アリの数が安定すると再び処女女王アリと雄アリが飛び立ち、新たなコロニーを形成する。

 

働きアリは大きく4種に分けられる。
・外で食糧を調達する食糧アリ
・食糧アリのために安全な場所を探索する偵察アリ
・巣の住環境を整える整備アリ
・巣の周りのごみに縄張り物質をつけ縄張りを広げるごみアリ

 

そしてどのコロニーにもアリの約半分は何もしていない怠け者のアリがいる。補欠選手と考えてもよい。

 

若いアリは整備アリとして巣の中で働き、やがて補欠組に入り、最後に外で働くアリとなる。
一度外で働きだすと地中には戻らない。

 

それぞれのアリの役割は臨機応変に切り替わることもある。
余分な食糧を置くと、ごみアリはごみ収集を止め、食糧調達に行き食糧アリと化す。
整備アリも偵察アリも食糧アリになる。
また、障害を作ることで通常よりも偵察が必要なら、整備アリは偵察アリに替わる。
しかし、整備の仕事を増やしても整備アリに戻るアリはおらず、巣の中から整備アリを召集しなくてはいけない。
巣の中のアリからスタートして、食糧探しがゴールとなる。

 

役割の切り替えは匂いで行っている。
アリは触覚で匂いを判別している。
同じ役割のアリは同じ匂いがする傾向にある。
外にいる時間が長くなるほど体の表面の油の組成が変わるので仕事によって体の匂いが異なる。

 

巣の中のアリはどれもすれ違って行くアリを感知し、他のアリと接触している。この関わり合いのパターンでアリが外に戻るかどうか、そして外でどの仕事をするのかを決める。どのアリも巣の中に戻ると他のアリと接触している。巣の入り口のすぐ中で待っていたアリは入ってくるアリと接触して外に出かけるか決めるのである。

 

このシステムの面白いのは、可変的で混沌としていることである。
アリは外に出て仕事をするため、アリが戻ってくる割合はアリに起きている状況次第である。
偶然の接触から完璧な状態が生まれるのではないが、うまく働いている。
アリは数百万年も生きてきた生物であり、南極大陸をのぞき至る所で生息している。

 

アリの役割交代はコロニーの大きさと密接に関係している。
小さいコロニーだとそれほど食糧アリに会うチャンスがないので、交代が少ない。
コロニーが成長するにつれて異なる行動が生み出される。

 

組織がいかに作用するのか?

アリのコロニーの変化、役割の替わり方を見ると、人の組織にも似たようなことが言えるかもしれない。

 

大企業は安定してくると新たな女王アリと雄アリを飛ばして新たな企業を作るべきだろう。

若いうちは家の近くで働かせ、ベテランになれば遠くへ旅立たせるほうが良いだろう。