TEDxHimiが終わって4日経った。
ようやく書けそうである。いや、全ては書けないかもしれない。
でも、書かなければ前に進めないと思うので、全力全開で書き殴っていこう。
きっかけはブリだった。
photo by Kengo Osaka
2012年にTEDxKyotoのメンバーとなった。
マサさんはそのころから異様な輝きを持っていた。
「自由と情熱」を体現しているおっちゃんだった。
初めて参加したメンバーの懇親会では氷見の寒ブリとどぶろくを振舞ってくれた。
そのとき、
「アフターパーティのお酒はビールとワインと日本酒だけみたいなんですけど、ウイスキーも出したいんですよねー」
とマサさんに何気なく言った。
「そんなもん(勝手に)出したらええやん。(誰も文句言わんて。文句言う奴おったら俺がこらしめちゃる)」
とマサさんは軽く答えた。
すげーよ、このおっちゃん!
一目惚れした。ファンになった。
それからのTEDxKyotoはずっとマサさんの後を追いかけてた。
TEDxKyoto2015では3ヶ月後に迫ったTEDxHimiのことだけでなく、TEDxTohokuの後継となるTEDxAizuについて熱く語っていた。
photo by Yucari Yonezawa
「阪神・淡路大震災の頃に生まれた大学生がTEDxAizuのファウンダーをするんや!彼と話してたら感動してしもてな。阪神・淡路大震災を経験してない若者が東日本大震災の復興のために立ち上がったんやで。TEDActiveで会った偉そうなアメリカ人なんかより断然すごいで。僕はもう感動してもてなー。」
マサさんは泣いていた。おっちゃんの涙がこんなに美しいものだとは思わなかった。
その瞬間、僕はマサさんのために1月24日のTEDxHimiに参加することを決めた。
パートナーとして、氷見の寒ブリに最高に合うウイスキーを提供するために。
僕はウイスキーマエストロとして生きる覚悟を決めた。
ウイスキーマエストロとは何なのか、僕なりに定義した。
世界に一人だけの存在、それがウイスキーマエストロ
Whisky worth spreading. それがウイスキーマエストロ
世界にウイスキーの素晴らしさを広げる、それがウイスキーマエストロ
ウイスキーと寒ブリ、ウイスキーとスパイス、ウイスキーと滝、ウイスキーと新たな組み合わせの価値を問い続け、伝え、広げる、それがウイスキーマエストロ
それから探求が始まった。
旬のブリは脂がのりまくってる。
とろけるような脂としっかりとした歯ごたえを合わせ持つ。
主張が強い。まるでマサさんのようだ。
海のものと合わせるなら海の香りがするウイスキーがいいだろう。
ボウモア、ラフロイグ、カリラ、タリスカー、ハイランドパーク、どれも島のウイスキー。海岸沿いで熟成している間にたっぷりと潮風を吸い込んで、海藻のような香りがする。
だが、氷見の寒ブリは存在感がある。その存在感に負けないくらい香りが強いもの、あるいは存在感を邪魔しない軽い香りのものの両極に振ってみたらどうだろう。そうすると、前者はラフロイグ、後者は3回蒸留のスコッチであるオーヘントッシャンがいいだろう。ラフロイグは僕が大好きなウイスキーなので味・香りとも分かっている。オーヘントッシャンを購入し何度かハイボールを試してみた。確かに主張しない。合うかもしれない。
そして、サントリーの記事で「山椒ハイボール」のことを知った。
SUNTORY公式ブログより
山椒か!
すぐに僕は家にあった山椒の粉末をオーヘントッシャンのハイボールに振りかけてみた。
めちゃいい!
口に含んだ瞬間にフワッと山椒の香りがする。その後でオーヘントッシャンの控えめな香りが余韻として続く。これで行こう!と思った。
ふらりと立ち寄ったコンビニで「天皇家の食卓と日用品」を立ち読みした。
「原了郭の御香煎」というワードが目に入った。
原了郭のホームページによると、
伝統香る原了郭の御香煎は、茴香(ういきょう)、陳皮(ちんぴ)といった漢方薬の原料を数種類合わせて香ばしく煎り、粉末状にして焼き塩で味つけしたもの。
とある。なんか良さそうだ。
早速、買いに行った。
ついでに香り高い山椒で有名な七味屋本舗の山椒も買った。
これもいい!
えも言われぬ良い香り。さすが皇室御用達!
だが、焼き塩も入ってるので味が少し塩っぱくなる。振りかける量は調整したほうがいいかもしれない。ブリにつけて食べても美味しいかも。ブリにつけて食べてる時にウイスキー飲んだら美味しいかも!テンション上がるー!
そうして試作を重ねるうちにオーヘントッシャンが無くなってしまった。
もう一回オーヘントッシャンに行くという手もあるが、できれば他のウイスキーも試したい。
ウイスキーを片手に本を語る会でカティサークとラフロイグを購入した。その時に山椒を試した。カティサークもラフロイグもやっぱり山椒合う。てか、山椒は何でも合いそう。山椒は万能。山椒は神。山椒さんと呼ばせてください。山椒さん。
カティサークとラフロイグはまだたっぷりと余っているので流用しよう。TEDxKyotoの時にボランティア限定で振舞った竹鶴17年も半分くらい余ってるので持って行こう。
TEDxHimiのパーティシパントは100名くらいなので、あと一本を追加しよう。
何にするかリカマンに行って決めよう。
リカマンでスコッチの棚に直行した。ざっと眺める。グレンモーレンジは相変わらず美しい。”ウイスキー界のロールスロイス”と称されるマッカランは燦然と輝いている。しかしいずれもちと高い。750mlで4000円オーバーだ。
やっぱり、グレンフィディックかグレンリベットにしよう、そう思い値段をみた。フィディックがいつも通り2980円でリベットが特価で2580円だった。どうやらリカマンはリベットを大量に仕入れているらしい。しばらくは安値だろう。フィディックの三角瓶に鹿の柄も捨てがたいが、シングルモルトという点においては味・品質ともに遜色のないリベットに決めた。
グレンリベット
The Glenlivet
唯一無二の意味を持つ定冠詞"The"がつけられたウイスキー。
初めて政府公認となった蒸留所。
約5億年前、一連の火山爆発がスコットランド高地を激しく生み出しました。それが今では地球上で最も古い岩盤構造の一つになっています。
数百年後、氷河時代の氷河の後退が谷間をくりぬき、広大な川では溶けた雪が花崗岩のスロープをスムースにしました。名もなく自然のままで、グレンリベットは創造されました。グレンリベットとは、ゲール語で、「静かな谷」を表します。近寄りがたい山々に囲まれた荒涼とした太古の地で、孤立した場所が隔離を保証したのです。
時を経て、グレンリベットは今日我々が知っているような姿を現しました。リベット川つまり「滑らかに流れる川」の氷のように冷たい水だけが荒涼とした輪郭を和らげたのです。自然がウイスキーを生産するのに完璧な環境を造り上げたのです。
その名に恥じないウイスキーが生まれる前夜です。
「静かな谷」から生まれるウイスキー。
さぁ、これで準備は整った。
あとは氷見に行くだけだ!
前日編へつづく