SINIC理論の小ネタ4は、前回少し触れたヒューマンルネッサンス研究所によるインタビュー記事から。
元京都大学総長でゴリラ研究の世界的権威である山極先生へのインタビュー「2030年、人類は新たな社会へ」から抜粋して紹介します。
公共圏の喪失
従来はニュースの共有によって国家がつくられていた。そのニュースを司っていたのがメディア。人々は情報に対して受け身であればよかった。しかしIT、SNSが発達し、人々は情報の受け手だけでなく出し手にもなった。
平野啓一郎さんが打ち出した「分人」、複数のコミュニティに属しながら、各コミュニティで求められる自分を演じる。いろいろな自分を表現できて、失敗しても別の自分がいると思えば落ち込まない。
インターネットは「モノを持たない」「何でもシェアする」そして「平等」を並立可能とした。ネット社会には中心という概念がないから、誰もが参加しやすく、そこから抜けるのも簡単。格差も生じない。
中心がなく権威も存在しない社会において、人々は狩猟採集民の精神状態に戻るだろう。狩猟採集の時代は食料を求めて移動したが、今は必要なものがどこでも簡単に手に入る。だからより自由に動き回れる。そして仲間とは常にバーチャルにつながっている。
本来、人の社会に必要なのは「動く自由」「集まる自由」「対話する自由」
3つの自由を駆使して、人は豊かな社会をつくり、生きる意味を見出してきた。
現在の遊動民たちは1人では何もできない。何もできなくても、何も持っていなくても暮らせる社会になっている。ただしシェアだけは必須で、シェアしないと生きていけない。2030年にはシェア技術の整備が進み、何も持たなくとも暮らせるようになるだろう。