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【全11回】SINIC理論の小ネタ4「山極先生へのインタビュー」

SINIC理論の小ネタ4は、前回少し触れたヒューマンルネッサンス研究所によるインタビュー記事から。
 
京都大学総長でゴリラ研究の世界的権威である山極先生へのインタビュー「2030年、人類は新たな社会へ」から抜粋して紹介します。
遊動民」現代風に表現すればノマド
背景にあるのは「」の喪失。これまでの地縁、血縁、社縁から人は解放され、都会に縛り付けられる必要性もなくなってきた。
 
公共圏の喪失
従来はニュースの共有によって国家がつくられていた。そのニュースを司っていたのがメディア。人々は情報に対して受け身であればよかった。しかしIT、SNSが発達し、人々は情報の受け手だけでなく出し手にもなった。
 
平野啓一郎さんが打ち出した「分人」、複数のコミュニティに属しながら、各コミュニティで求められる自分を演じる。いろいろな自分を表現できて、失敗しても別の自分がいると思えば落ち込まない。
 
インターネットは「モノを持たない」「何でもシェアする」そして「平等」を並立可能とした。ネット社会には中心という概念がないから、誰もが参加しやすく、そこから抜けるのも簡単。格差も生じない。
 
中心がなく権威も存在しない社会において、人々は狩猟採集民の精神状態に戻るだろう。狩猟採集の時代は食料を求めて移動したが、今は必要なものがどこでも簡単に手に入る。だからより自由に動き回れる。そして仲間とは常にバーチャルにつながっている。
 
本来、人の社会に必要なのは「動く自由」「集まる自由」「対話する自由」
3つの自由を駆使して、人は豊かな社会をつくり、生きる意味を見出してきた。
 
現在の遊動民たちは1人では何もできない。何もできなくても、何も持っていなくても暮らせる社会になっている。ただしシェアだけは必須で、シェアしないと生きていけない。2030年にはシェア技術の整備が進み、何も持たなくとも暮らせるようになるだろう。
 
「SINIC理論」によれば、自然社会での理想はノーコントロール状態。これは権威がない社会。ここで重要なのは文化と文明の違い。文明には政治組織が必要だけど、文化にはそんな組織は不要。
 
なぜなら文化とは、人々の暮らしの中に埋め込まれているリズムだから。そのリズムに同調するからこそ、人々は自然の流れに乗ってゆったりと暮らせる。流れの中で自然に交流が生まれて、信頼関係が育まれていく。そんなノーコントロールな自然社会が、2030年には実現するのだろう。
 
 
次回はSINIC理論の原文について紹介します。
 
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