学びと食、ときどきランニング

ウイスキーマエストロによるIdeas worth spreading

京旅籠むげんの蔵Barでひっそりとカウンターに立つ

今回のラインナップ

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京都のクラフトジン「季の美」

ハイランドパーク12年

カティサーク

 

お客様は女将と僕が招待した4名とお泊まりのお客様のご夫婦1組のみ。

 

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季の美はストレートで飲むと7種のボタニカルが複雑に主張して個性の強いお酒。

 

でもソーダ割りにすると香りが和らぎ飲みやすくなる。

 

焼き芋屋さんが来てくれたのでお通しに焼き芋をお出しする。

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紅はるかと安納芋。

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紅はるかにハイランドパークをちょっと垂らして食べると大人な味になった。優しい甘味と熟成の香りのマリアージュ

 

ご夫婦の男性は蔵Barが提供するジャパニーズウイスキーもいくつか注文した。

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響21年と富士山麓18年をソーダ割りで。

贅沢な飲み方。美味しいだろうなと思いながら提供する。

 

会の終わり頃に女将が「好きなウイスキー飲んでいいですよ」と言ってくれた。

 

超熟のものも何本もある中、僕はボウモア ホワイトサンズ17年を選んだ。

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バーボン樽で17年熟成

三色のボウモア~ゴールド・リーフ、ブラック・ロック、ホワイト・サンズ~|新橋の酒物語がここに。シュヴァーン(schwan)公式サイト

「ホワイト・サンズ」とは、ロッホ・インダールのほとり、ラーガンベイ(Laggan Bay)にある弓状の白い砂浜の名前です。長い年月の干満で作られたほとんど手つかずの7マイル(約11㎞)のビーチとエメラルドグリーンの海は、高い緯度にあるにもかかわらず、南国の海を想わせるものがあるそうです。

 

 

スコットランドにある南国の海。あぁ、行ってみたい。

 

 色は深めの琥珀色です。香りは、バーボン樽由来のバニラ香を中心に、17年の熟成によって深みを増したピート香、さらにパッションフルーツのようなエキゾチックなフルーティーさも感じられます。口に含むと、やわらかいピートを感じた後、熟したイチジクのようなフルーティーな甘さ、糖蜜のような香ばしい甘さへと変化していきます。フィニッシュは今回ご紹介した中でも一番長く、軽めながらも上品なピート感、麦由来の上品な甘さ、そしてトフィーのようなクリーミーさ、すべてが最高のバランスで感じられ、次の一口へと誘います。

 

バーボン樽での熟成は大人の男性のようである。「騎士団長殺し」の免色ようなダンディズムがある。

 

 

 

海抜0メールの蒸溜所として知られるボウモアの中でも、大潮の満潮だと海面より低くなってしまう第1熟成庫で貯蔵されていた原酒だけを使用しているようです。

 

 

海面よりも低くなってしまう熟成庫。そこに寝かせられたウイスキー達を思うと、僕の身体はバラバラになり、海に溶け、樽の呼吸に誘われ、ウイスキーと一体となってしまう。

 

 

あぁ、今回も楽しかった。

 

お宿の寝心地も最高だった。

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「なんでそんなことを覚えなくちゃいけないの?」と娘は言った。

僕の娘は中学一年生で、いまは期末試験の勉強を夜遅くまでしている。

 

昨晩、彼女が勉強してるところを覗くと、保健体育のテキストを開いていた。

 

「欲求と欲求不満かぁ」

 

僕はノートに赤字で書いてある単語を読んだ。

 

「なんでそんなことを覚えなくちゃいけないの?」

娘は憤慨して言った。

 

「副交感神経なんて言葉、使ったことある?」

 

「まぁ、あるよ。何でも勉強しといたほうが後々役に立つと思うよ」

僕は答えた。

 

けれど、娘は納得いかないようだった。

 

なんでそんなことを覚えなくちゃいけないの?と中学一年生の娘に問われたら、どう答えるのが正解だったのだろう?

 

欲求も欲求不満も副交感神経も覚えといて損はないと思う。

 

数学の定理もいずれ役に立たつ。

 

それらを全然知らないよりは、知っておいたほうがいいと思う。

 

40年生きてきて実感することだ。

 

だけど、それは経験していないと分からないかもしれない。

 

僕に言えることは、ただ、純粋に、好奇心を持って、一つの単語、一つの定理に向き合うこと、それが、人生の幸せ目盛りをほんのすこし上げることに繋がるのだ。

 

ということを娘に言ったところで伝わらないんだろうなぁ。

騎士団長殺しにおける免色のウィスキーの飲み方について

「もしお持ちでしたら、ウィスキーを少しいただけますか?」と免色は言った。

 

騎士団長殺し」第1部 顕れるイデア編 の225頁で、免色はウィスキーを所望した。

免色は物語のキーとなるキャラクターで、白髪の54歳の独身男性である。

 

「普通のスコッチ・ウィスキーでいいですか?」

主人公の画家は免色に聞いた。

ここでいう普通のスコッチ・ウィスキーとはホワイト・ラベルである。ブレンデッドスコッチ・デュワーズの代表的なボトルで、ライトボディでスムーズ、2000円以下のクラスではよくできている。ロックでもソーダ割りでもいける。

 

そのホワイト・ラベルを免色はどのようにして飲むのか?

 

主人公の問いに対し、免色はささやかなリクエストをした。

 

「もちろん。ストレート でください。それから氷を入れない水と」

 

免色は分かっている。かつて事業で成功をおさめ、オペラに深い造詣があり、英国車を複数台所有し、別荘地で隠遁生活を送る男。そのような男はウィスキーの飲み方も心得ている。

 

ストレートで飲むことは、当然、ウィスキーの味わいを100%感じることができる。デュワーズ・ホワイトラベルの穏やかで、しっかりとしている味わい。麦芽を感じ、アマニ油やユーカリ油を仄かに感じる。ほんの少量、口に含み、それらのアロマやフレーバーを感じながら、ゆっくりと体内に入れることができる。

 

加えて、”氷を入れない水”である。いわゆるチェイサーであるが、氷を入れないことによって、舌は冷やされることなく、感覚は鋭敏に保たれる。胃の中でウィスキーと常温の水が混じりあい、適度にアルコールの吸収を和らげる。

 

そのようにして、免色はグラスを空にした。

お代わりを注がれたけど、口はつけなかった。

手に持ったウィスキーのグラスをただ軽く揺らせていた。

 

やがて、免色は言った。

「ウィスキーをご馳走さま。また近いうちに連絡させていただきます」

 

 免色は月の明かりの下で、艶やかな銀色のジャガーに乗り込んで帰って行った。

 

飲酒運転ではあったけど、それはさして物語に影響するものではなかった。

 

とにかく、免色のウィスキーの飲み方は、54歳の男として理想的なものである。

 

 

 

ウイスキーの分水嶺

僕がウイスキーを飲み始めたのは21歳の頃だった。

 

その時はバーボンばかり飲んでいた。

 

落ち着いてゆっくり飲む酒がウイスキーだった。

 

33歳の時、思いたってウイスキーエキスパートの資格を取った。

 

それ以来、ウイスキーの魅力を正しく伝える活動をしている。

 

そして、今日、唐突に、40歳というのはウイスキーのベテランとなってしまったんだなぁと思った。

 

村上春樹の騎士団長殺しを読んでいて、主人公が36歳で、生(き)のウイスキーを飲んでぐっすりと寝たという描写を読んで、あぁ、ウイスキー分水嶺を越えてしまったんだ僕はと、しみじみと思った。

京都マラソンをいかに楽しく走りきるか?体験記

「最後まで楽しく走りきる!」

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それが2017年の京都マラソンの目標だった。

 

ベストタイムは3時間半だけど、そのレベルの練習は全然できてなくて、試走会でも20km越えると足がつってる状態だった。

 

直前の仕上がりで、7分/kmのペースで走れば無理なく完走できるなと感じていた。

 

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3時間半で申請してたので、ゼッケンはAブロックとかなり前のほうからのスタート。

 

朝は凍結してたらしいけど、スタート時刻にはほどよい寒さで絶好のマラソン日和となった。

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スタート前にマイ補給食の羊羹を食べる。虎屋のラムレーズン味。レーズン入りでかなり美味い。

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京都マラソンは17kmまで給食がないので早めに補給しておいたほうがエネルギー切れを心配しなくていい。

 

 

 Aブロックの後ろのほうからスタートして、先頭から1分遅れでスタートゲートをくぐる。

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最後のGブロックは15分遅れくらいらしい。

 

 走りながら、前日のマラソン教室でコーチが言っていたことを思い出す。

 

「外に気を向けると辛くないですよ」

 

マラソンは一人で走るけど、仲間のランナーに声をかけたり、沿道の声援に応えることで、しんどくなくなる。これは僕の経験上からも実感している。

 

だから、積極的に沿道の人とハイタッチをした。

特に京都外大や野球のユニフォームを着てる子ら、おばあちゃん、小さいこども達とハイタッチすると元気が出た。

 

そうして、外に気を向けながら走るといつの間にか桂川に出た。

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遠くに愛宕山が見える。雪景色がきれい。

 

外に気を向けるのは人だけじゃなく、自然に対しても同じ効果がある。

 

景色を楽しみながら走ると気持ちいい。

 

やがて渡月橋が見えてくる。

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ここで6kmくらい。

 

広沢池。

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サギが喧嘩してるのを眺めながら走る。

 

10kmを過ぎる。

 

最初の10kmは周りに流されてハイペースになり、6分/kmだった。自重せねば。

 

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仁和寺の和尚が真っ赤な旗を一生懸命振ってくれる。うれしい。

 

 14km地点

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 左大文字がきれいに見える。

 

20kmを過ぎる。

 

だいぶ身体がしんどくなってくる。

コース中一番アップダウンのある区間ということもあり7分/kmにペースダウン。このままのペースで最後まで行けるか?

 

北山通りは沿道の声援が再び多くなる。オムロンの旗を振る社員の応援団をみると元気になる。

 

給水ボランティアにもオムロン社員がたくさんいて声をかけてくれる。知り合いに名前を呼ばれるだけで、もっと走ろうと思える。

 

 

ようやく植物園に入る。

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梅が見頃だった。

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腰が痛い。

 

鴨川に降りる。

 

ひたすら南下する。

 

しんどい。

 

ミニトマトにみかん、パンを補給する。

出来るだけ、かわいい女の子から手渡ししてもらうよう調整する。

 

 

ようやく30km

ではなく、もう30km

と声に出したほうがいいよ。

とアドバイスされたことを思い出す。

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あと12km。

もう2/3を過ぎた。

 

御所の前でオムロン応援団に手を振る。

またちょっと元気になる。

 

でもすぐにしんどくなる。

 

すれ違うオムロンランナーに声をかけて気を紛らわせる。

 

また楽になる。

 

青い帽子をかぶったオムロンランナーを探す。

 

声をかける。

 

 京都市役所は35km地点。

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雪の宿を補給する。

 

再び、すれ違うオムロンランナーに意識を向ける。気を紛らわせる。

 

すれ違いポイントを過ぎ、沿道の応援がまばらになる川端通が一番精神的に応える。

 

上空を見上げるとトンビが飛んでいる。

尾羽を器用に動かし方向転換している。

油揚げになってトンビにさらわれたいと思いながら走る。

少し気が紛れた。

 

右大文字が見えてくる。もうすぐ京大。

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京都マラソンは四回目だけど、百万遍の坂が一番しんどいと思う。勾配はそんなにないけど、残り4kmで登り坂はきつい。歩く。

 

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折り返して下りになり、走る。

 

足がつりそうになる。

 

立ち止まり、ストレッチ。

 

歩く。

 

走る。

 

歩く。

 

走る。

 

あと2km。

 

歩く。

 

走る。

 

歩く。

 

走る。

 

あと1km。

 

歩く。

 

走る。

 

あと195m。

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ゴールの鳥居が見える。

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ゴール。

 

振り返って、脱帽し、コースにお礼する。

 

タオルをもらう。

 

メダルをかけてもらう。

 

荷物受け渡しの手前にミスきものの人たちがひっそりと記念撮影してたので僕も撮ってもらう。

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めっちゃきれい。ひそやかなご褒美。

 

着替えて、オムロン用休憩所に行って、おにぎりと味噌汁をいただく。

 

食べ終わり、そそくさと帰る。

 

家の近所のスーパーで肉とビールを買う。

 

走ってる時にずっと憧れてた肉とビール。

 

ビールは我慢できず風呂に入る前に飲む。

 

風呂上がりにハイボール飲みながら焼肉の準備をする。

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久しぶりの家での焼肉。

いつもよりたっぷりと肉を買った。

豚バラとハラミ。

 

家族五人でよく食べた。

 

すっごい満足した。家族団欒も味わった。

 

しかし、僕の最終目標は「翌日、元気に出社する」ことにあった。

 

肉は食ったのでアミノ酸補給はできた。

 

あとは体力を回復するだけだ。

 

8時ごろから10時間寝た。

 

コンコンと寝た。

 

体力が回復していくのがわかった。

 

6時に起きた。

 

筋肉痛はほとんどない。

 

動ける。

 

目標を達成した。

 

完走直後と同じくらいの満足感だった。

 

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次のレースは比叡山トレイル50km

https://www.mt-hiei.com

 

今度はちゃんと練習しよう!