僕の娘は中学一年生で、いまは期末試験の勉強を夜遅くまでしている。
昨晩、彼女が勉強してるところを覗くと、保健体育のテキストを開いていた。
「欲求と欲求不満かぁ」
僕はノートに赤字で書いてある単語を読んだ。
「なんでそんなことを覚えなくちゃいけないの?」
娘は憤慨して言った。
「副交感神経なんて言葉、使ったことある?」
「まぁ、あるよ。何でも勉強しといたほうが後々役に立つと思うよ」
僕は答えた。
けれど、娘は納得いかないようだった。
なんでそんなことを覚えなくちゃいけないの?と中学一年生の娘に問われたら、どう答えるのが正解だったのだろう?
欲求も欲求不満も副交感神経も覚えといて損はないと思う。
数学の定理もいずれ役に立たつ。
それらを全然知らないよりは、知っておいたほうがいいと思う。
40年生きてきて実感することだ。
だけど、それは経験していないと分からないかもしれない。
僕に言えることは、ただ、純粋に、好奇心を持って、一つの単語、一つの定理に向き合うこと、それが、人生の幸せ目盛りをほんのすこし上げることに繋がるのだ。
ということを娘に言ったところで伝わらないんだろうなぁ。