学びと食、ときどきランニング

ウイスキーマエストロによるIdeas worth spreading

7日間ブックカバーチャレンジ文庫編6日目「代表的日本人」

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内村鑑三「代表的日本人」

 

新渡戸稲造「武士道」、岡倉天心茶の本」と並ぶ、日本人が英語で日本の文化・思想を西欧社会に紹介した代表的な著作。

 

内村鑑三が、奔流のように押し寄せる西欧文化の中で、どのような日本人として生きるべきかを模索した書。

 

代表的日本人として、

西郷隆盛(新日本の創設者)

上杉鷹山(封建領主)

二宮尊徳(農民聖者)

中江藤樹(村の先生)

日蓮上人(仏僧)

の5人を挙げている。

 

このなかで一番マイナーなのは中江藤樹かもしれない。

 

村の先生、中江藤樹

 

「日本でどのような学校教育を授けられていたのか?」

西洋の文明人のなか、そう問われた内村鑑三は、次のように答える。

「私どもは、学校教育を知的修練の売り場とは決して考えなかった。修練を積めば生活費が稼げるようになるとの目的で、学校に行かされたのではなく、真の人間になるためだった。私どもは、それを真の人、君子と称した。英語でいうジェントルマンに近い」

 

その理想的な君子として書かれるのが中江藤樹である。

 

藤樹は11歳の時に早くも孔子の「大学」によって、将来の全生涯を決める大志を立てた。

「大学」の次の一節を読み、藤樹は天に感謝する。

 

“天子から庶民にいたるまで、人の第一の目的とすべきは生活を正すことにある“

その大志を抱き続け、藤樹は母との貧しいながらも幸福な時を過ごす。

 

住んでいる村で学校を開き、一生を終わる日まで、平穏無事の楽しい日々を続けた。

 

藤樹の外見の貧しさと簡素さとは、その内面の豊かさ、多様さと比較すると、あまりにも不均衡である。

 

藤樹の内には、自分を絶対君主とする一大王国があった。

 

藤樹の外面の穏やかさは、内面的充足の自然の反映だった。

 

藤樹は、人為の「法(ノモス)」と外在的な「真理(道、ロゴス)」を明確に分けていた。

“法は、時により変わる。しかし道は、永遠の始めから生じたものである。人間の出現する前に、宇宙は道をもっていた。人が消滅し、天地がたとえ無に帰した後でも、それは残りつづける。しかし法は、時代の必要にかなうように作られたものである。時と所が変わり、聖人の法も世に合わなくなると、道のもとをそこなう”

いまもなお藤樹の道は語り継がれている。

https://takashima-kanko.jp/spot/2018/06/post_101.html

7日間ブックカバーチャレンジ文庫編4日目「この国のはじまりについて」

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司馬遼太郎対話選集1「この国のはじまりについて」

 

湯川秀樹との対談もある。

ノーベル物理学賞を受賞しているのにやたらと歴史に詳しい湯川秀樹

 

対談では司馬遼太郎よりもかなり話してる。

 

丸顔と細面の違いについて

 

出雲と朝鮮について

 

蒙古語と日本語の関係

 

縄文文化

 

弘法大師の複雑さ

 

血液型からみた日本人

 

など

 

魅力的なコンテンツがたくさんある。

 

知識が豊富な人の話を聴くのは楽しい。

7日間ブックカバーチャレンジ文庫編3日目「ふくわらい」

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西加奈子「ふくわらい」

 

第1回河合隼雄物語賞 受賞作

 

選考委員のひとり、上橋菜穂子はこのように選評した。

 

「物語としてしか命を持ちえない作品」

 

物語が命をもつ、というのは、

これしかない、と思い込んでいた世界の姿が、その物語を読むことで、ぱっと吹き飛ばされ、ペラペラと紙吹雪に変わり、やがて、再び、ゆっくりと戻ってきて、もとの世界の姿をつくっていくのを見る。

そのとき、ああ、そうか、そうだったのか、という気づきが、新鮮な感動とともに、心に広がって行く。

上橋菜穂子は解説する。

 

「ふくわらい」には主人公の定(さだ)だけでなく、彼女の周りに魅力的な人々が登場する。そして、定をより魅力的に変えていく。

 

私は守口廃尊(もりぐちばいそん)が特に好きだ。

守口廃尊は1965年生まれ、1984年、プロレスデビュー。

1986年、蝶野や橋本、武藤ら同年デビューのレスラーと共にアメリカ武者修行、ヒールとして戦う。

帰国後、鬱病となり、自殺未遂や入退院を繰り返し、新日本プロレスを解雇され、いまは小さなプロレス団体でリングに立ちながら、週刊雑誌のコラム執筆を5年ほど続けている。

生い立ちや背景は「リアル」に登場する脊損プロレスラー・スコーピオン白鳥と似通っている。

scotchhayama.hatenablog.com

 

そんな守口廃尊が試合後に語った言葉が響いた。とてつもなく。

おいらはプロレスラーだ。

だが、こんな風に売文もしている。

本当は、言葉が怖い。

言葉をうまく組み合わせないといけない社会が怖い。

でも、頼らずにはおれない。

おいらには言いたいことがたくさんあった。

 

猪木さんになりたかった。

ずっと猪木さんみたいになりたかった。

でもなれなかった。

天才にはどうしたってなれねぇ。

でも、おいらには、これしかない。

猪木さんの背中すら見えない、

足跡すらかすんでいる、 

そんな道で、

でもおいらは、

やるしかないんだ。

 

だって、おいらはプロレスが好きなんだ。

プロレスに好かれていなくても、

おいらはプロレスが好きなんだ。

 

そしてそんな俺が、俺なんだ。

猪木さんじゃねぇ。俺なんだ。

 

俺は死ぬまでプロレスをやる。

そしてその決意を、こうして言葉にする。

 

おいらは体も、言葉も好きだ。

 

それって何だ、

わからねぇけど、

ほとんど生きてるってことじゃねぇのか。

おいらが生きてゆくってことじゃねぇのか。

 

生きてるんだから、

おいらは好きなことをする。

 

生きるのが終わるまで、

好きなことをする。

 

体も、言葉も、好きなことをする。

生きるのが終わるまで。

 

 

西加奈子の紡ぐ言葉は力強い。生に満ち溢れている。

7日間ブックカバーチャレンジ文庫編2日目「一夢庵風流記」

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前田慶次の名を世に知らしめた「花の慶次 ー雲のかなたにー」の原作本「一夢庵風流記」は隆慶一郎歴史小説である。

 

この本を読んで歴史小説にはまった。

隆慶一郎はかぶき者や漂泊の民との親交を一貫して書いている。

漂泊の民は京の河原などに移り住み、ときおり芸能をしながら旅する人々。

時の政権からの支配を受けず自由に生きる人々。

 

前田慶次も彼らと交わり、喜怒哀楽を自由に表現し、戦国の世を生き抜いてきた。

 

雲のように。

7日間ブックカバーチャレンジ漫画編6日目「BLUE GIANT SUPREME」

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漫画でジャズを描く

 

漫画だけど音が聴こえる

 

9巻のレコーディングのシーンが好きだ。

 

ネクタイをしめ、寡黙で真面目なレコーディング・エンジニアがNUMBER FIVEの音を聴いて驚愕する。

 

彼らは本物かもしれない。

 

彼らは僕の意見を求めてきた。

 

それも重要な局面で。

 

NUMBER FIVEは特殊なバンドなんだ。

 

彼らのために僕は何をすべきか?

 

レコーディング最終日に2つの提案をする。

まずレコードにする。楽器本来のサウンドに近づける。荒々しさや楽器の温かみが残せる。NUMBER FIVEにはその作業が必要だと思います。

 

もう1つの提案。1曲目から、録りましょう。1曲目からラストまで通しで、1テイク。一発で、アルバムの全てを録音するんです。NUMBER FIVEは、曲を追うごとに熱量が上がります。そこには1曲ではとらえられない、何曲かを通してのドラマがあるんです。ライブの全て、スポーツなら一試合丸々を収録する。それがあなたたちのレコーディングだ。

 

それ、いいっすね。

 

1曲目、Recording

2曲目録ります!  3、2、1、

3曲目‼︎ 3、2、1、

4曲目。

5

6

Yeah‼︎

最高だ‼︎

 

クールなレコーディング・エンジニアがここまで熱くなる。

NUMBER FIVEのデビューアルバム。聴きたい。