ウイスキーは「生命の水(アクア・ヴィテ)」を語源とする。
錬金術で不老不死の薬を作ろうとした結果、生まれたものである。
ウイスキーに関する最古の記述は1494年のスコットランド王室の出納記録「王の命令によりアクア・ヴィテ製造用に8ボル(約500キロ)のモルトを修道士ジョン・コーに支給する」という一節で、その頃はウォッカやジンと同じく無色透明の蒸溜酒であった。
それから約200年後の1707年、イングランドはスコットランドを併合し、新たな財源確保のためウイスキーに対して高額の課税をするようになった。
課税を嫌う人たちは山奥の水のきれいな谷で隠れてウイスキーを造るようになり、手近にあったシェリー酒の空き樽に「密造ウイスキー」を詰めて、徴税人に見つからないようにしていた。
そして時が経ち、樽から取り出したウイスキーは美しい琥珀色になり、味も香りもまろやかになった。
このようにして偶然にも生まれたのが樽熟成であり、ウイスキーのアイデンティティーを決める重要な工程の一つとなった。
スコッチウイスキー用の樽は全てリサイクル品である。
シェリー酒を入れていたシェリー樽、バーボンを入れていたバーボン樽の2種類がよく使われる。
1回の熟成に10年~20年くらい使用され、使用後も新たにウイスキーを詰めて再び熟成する。
通常3~4回、50年程度、樽はリサイクルされ、その後はテーブルや植木鉢などに生まれ変わる。
最近では、引退間近な樽を再生する方法も開発されている。
樽は長年ウイスキーと接していると接触面から木の香りが奪い取られていく。そこで表面を少し削り、火で炙って活性化させるシーズニングという工程を加えることで、樽の香りが復活し、150年ほど持つ可能性もあるという。
樽は熟成庫に置かれた位置によっても寿命が変わる。
効率よく貯蔵するため、樽は4~5段くらいの高さに積まれる。すると上の段と下の段では気温や湿度が異なってくる。
気温が高く湿度が低い上の段ほど、熟成中のウイスキーは樽の香りを濃厚に取り入れるが、樽の寿命は短くなる。
スコッチウイスキーにおける樽の再生には、環境をきめ細やかに測ってやることが重要となるだろう。