学びと食、ときどきランニング

ウイスキーマエストロによるIdeas worth spreading

スコッチウイスキーにおける樽の再生

ウイスキーは「生命の水(アクア・ヴィテ)」を語源とする。

錬金術で不老不死の薬を作ろうとした結果、生まれたものである。

 

ウイスキーに関する最古の記述は1494年のスコットランド王室の出納記録「王の命令によりアクア・ヴィテ製造用に8ボル(約500キロ)のモルトを修道士ジョン・コーに支給する」という一節で、その頃はウォッカやジンと同じく無色透明の蒸溜酒であった。

 

それから約200年後の1707年、イングランドスコットランドを併合し、新たな財源確保のためウイスキーに対して高額の課税をするようになった。

課税を嫌う人たちは山奥の水のきれいな谷で隠れてウイスキーを造るようになり、手近にあったシェリー酒の空き樽に「密造ウイスキー」を詰めて、徴税人に見つからないようにしていた。

そして時が経ち、樽から取り出したウイスキーは美しい琥珀色になり、味も香りもまろやかになった。

このようにして偶然にも生まれたのが樽熟成であり、ウイスキーアイデンティティーを決める重要な工程の一つとなった。

f:id:ScotchHayama:20181001111211j:plain

 

スコッチウイスキー用の樽は全てリサイクル品である。

シェリー酒を入れていたシェリー樽、バーボンを入れていたバーボン樽の2種類がよく使われる。

1回の熟成に10年~20年くらい使用され、使用後も新たにウイスキーを詰めて再び熟成する。

通常3~4回、50年程度、樽はリサイクルされ、その後はテーブルや植木鉢などに生まれ変わる。

 

最近では、引退間近な樽を再生する方法も開発されている。

樽は長年ウイスキーと接していると接触面から木の香りが奪い取られていく。そこで表面を少し削り、火で炙って活性化させるシーズニングという工程を加えることで、樽の香りが復活し、150年ほど持つ可能性もあるという。

 

樽は熟成庫に置かれた位置によっても寿命が変わる。
効率よく貯蔵するため、樽は4~5段くらいの高さに積まれる。すると上の段と下の段では気温や湿度が異なってくる。
気温が高く湿度が低い上の段ほど、熟成中のウイスキーは樽の香りを濃厚に取り入れるが、樽の寿命は短くなる。

 

スコッチウイスキーにおける樽の再生には、環境をきめ細やかに測ってやることが重要となるだろう。