漫画化や映画化にもなった。
漫画は岡野玲子が描いた。
どちらも世界観が確立されててよかった。
原作でも晴明と博雅の掛け合いがいい。
物語は博雅が晴明の家に行き、酒を酌み交わしながら、怪異の相談をするところから始まる。
「玄象という琵琶鬼のために盗らるること」というお話では、呪(しゅ)について語られていた。
呪とは何であるのか
呪とは、名ではないか
呪とは、ものを縛ること
ものの根本的なあり様を縛るというのは、名だぞ
この世に名づけられぬものがあるとすれば、それは何ものでもないということだ。存在しないと言ってもよかろうな
博雅は現実、晴明は非現実として、お互いを認め合っている。その関係性が、この物語の幹となっている気がする。
二人の会話を聴いているだけで楽しい。
やがて、話がまとまり、
「ゆこう」
「ゆこう」
と怪異のもとへ向かう。
闇が闇として残っていた時代
人々の何割かは、妖しのものの存在を確実に信じていた頃
遠境の森や山の奥ではなく、人も、鬼も、もののけも、同じ都の暗がりの中に、時には同じ屋根の下に、息をひそめて一緒に棲んでいたのがこの時代である。
陰陽師を読めば、そのような時代へタイムスリップできる。
ゆっくりと、酒でも飲みながら、読みたい本である。