学びと食、ときどきランニング

ウイスキーマエストロによるIdeas worth spreading

副業でBARを開店した7日目の記録

まいど。

開店日の翌日は肉体的な疲れが続いて、本業をする気に全くなれず、ブログを書いてしまう。振り返りたくなる。

Riversidecafe - 新店舗告知 - 【日曜夜枠のお店紹介】幸のハイボールBAR

 

今日は友達が肉をテイクアウトして持ってくると言っていたので肉に合うウィスキーを調達しておいた。

他のお客さんにも出せるように肉を少しだけ買っておいた。

ハイボール一杯に対して肉を二枚で5セット分用意できる。

 

お盆休みをはさんで2週間ぶりの開店なのでいろいろと忘れてる。

準備に手間取る。

買ってきた食材を冷蔵庫に入れ、倉庫から備品を出す。

調理器具をセットする。

グラスもセットする。

ニンジンを切り、玉ねぎの皮をむき、大葉に水をやる。

焼きナスを仕込んでるところで友達2名が早めの来店。

開店前だったのでしばらくソファーで話しててもらう。

焼きナスをフライパンで作るのはまだ慣れない。焼きムラができる。

なんとか整えて器に入れラップをかけて冷蔵庫に入れる。

 

開店時間になり、看板を出す。

友達に声をかけカウンターに座ってもらう。

肉ではなくフィッシュアンドチップスをテイクアウトしたとのこと。

それに合うハイボールを提供し、枝豆を仕込む。

 

とんぺい焼きを注文されるが、キャベツを買い忘れたことに気づき、ニラ玉に変更してもらう。いつも何かを忘れる。仕方ない。

 

先に枝豆を出す。枝付きの枝豆のさやを両端カットして塩分濃度4~5%で茹でたもの。

ハイボールに合う。

 

ニラ玉も出す。ヒガシマルのうどんスープ1/2袋を大さじ1.5の水で溶いて卵3個と混ぜて炒めたニラと合わせる。両面焼く。8等分にカットする。

ハイボールに合う。

 

遅れてもう一人友達が来る。冷やしうどんを所望される。

 

先に肉とハイボールを提供する。

タリスカー10年に黒コショウと牛カルビを焼いて溜まり醤油を絡めたものを合わせる。

黒コショウを一粒かじり、タリスカーハイボールをグイッと飲む。そして肉。この繰り返し。生きてる!って感じがする。

タリスカーが無くなるまでメニューに載せておこう。

 

忘れないうちに焼きナスも出す。

しっかり冷やすと美味い。大葉、ネギ、ゴマ、生姜のすりおろし、かつお節をかけ、薄口醤油を回しかける。僕にとっては夏の季語。

ハイボールに合う。

 

さらに友達が来る。今日は友達以外は来ない日だな。お気楽。

 

冷やしうどん作る。

ヒガシマルうどんスープを濃い目につくって氷で急冷して、お酢と醤油を小さじ1ずつ足す。冷水でしめたうどんを丼に入れ、トッピン具を盛り付けてスープをそっと注ぐ。

半熟卵と豚バラがポイント。豚バラ焼いて溜まり醤油を絡めたのがめっちゃ美味い。

スープにお酢を入れてるのであっさりしてる。好みでごま油をたらしても良い。

マイブームで家でもよく作ってる。長男の評判がとても良い。

 

さらに友達2人来る。いつもの店と違ってとてもプライベートな空間ができあがる。

 

友達みんなに適当に飲んでもらい、食べ物を適当に出す。お土産でもらったハムも焼いて出す。噛み応えある。

 

お勘定は適当に、チップもたくさん払ってもらい、少人数ながら売り上げが良かった。

 

最期まで残ってた3人を看板片づけがてらお見送り。

 

余った肉を豚バラもふくめて焼いて食べた。タリスカーハイボールと共に。

 

五島うどん地獄炊きも作ってみた。つけ汁と卵醤油の2種類を交互につけて食べるとう美味い。つるつる。

 

のんびり片付けて、1時前に全て完了。

 

ホテルまで2kmの距離を鴨川沿いに歩いて帰る。足がパンパン。

 

翌朝はいつもの早起亭うどんで「ひもかわうどん」を初注文。

幅が10cmくらいあって美味しかったけどめちゃめちゃ食べにくかった。

いろんなうどんがあるなぁ。

村上春樹とウィスキーvol.4「羊をめぐる冒険」

村上春樹の小説に登場するウィスキーを紹介する。

 

第四弾は「羊をめぐる冒険

初期三部作の三作目

 

僕と<鼠>と羊にまつわる物語。

 

最初にウィスキーの記述が登場するのは「十六歩歩くことについて」という節だった。

(上巻・25頁)

アパートの廊下をドアに向かって十六歩歩いた。

目を閉じたまま正確に十六歩、それ以上でもそれ以下でもない。

ウィスキーのおかげで頭はすりきれたネジみたいにぼんやりとして、口の中は煙草のタールの匂いでいっぱいだった。

 

ウィスキーの霧の中をまっすぐ十六歩歩く。

 

二十歳の頃に関係をもった女の子の葬式に行き、妻と別れ、新しいガールフレンドを作った。耳が美しい女の子。

彼女と最初の出会いでバーの話になる。

「バーではいつもどんなものを食べるの?」

「いろいろだけれど、まあオムレツとサンドウィッチが多いね」

(中略)

「良いバーはうまいオムレツとサンドウィッチを出すものなんだ」

これには激しく同意する。

 

彼女に生い立ちを聞かれ、回答の中でウィスキーが登場する。

(上巻・62頁)

「(中略)夏はビールを飲んで、冬はウィスキーを飲む」

「そして三日に二日はバーでオムレツとサンドウィッチを食べるのね?」

「うん」と僕は言った。

 

僕の話を聞いて彼女は「耳を開放」した。

そして「羊をめぐる冒険」が始まることを予言した。

 

僕は仕事の相棒に呼び出される。羊の話を聞くために。

相棒は優秀だがアル中の一歩手前だった。

(上巻・78頁)

僕が事務所に着いた時、彼は既にウィスキーを一杯飲んでいた。

一杯で止めている限り彼はまともだったが、飲んでいることに変りはなかった。

 

相棒からとてもやっかいな依頼を聞かされる。僕が<鼠>から受け取った羊の写真が関係していた。

 

(上巻・98頁)

相棒が部屋を出ていったあとで、僕は引出しから彼のウィスキーを見つけ出して一人で飲んだ。

 

依頼について、羊の写真について考察をはじめる。

(上巻・101頁)

僕はスカイブルーのソファーの上でウィスキーを飲み、ふわふわとしたタンポポの種子のようにエア・コンディショナーの気持ちの良い風に吹かれながら、電気時計の針を眺めていた。

心もふわふわとしてくる。考えがまとまらない。

(上巻・102頁)

僕はあきらめてウィスキーをもうひと口飲んだ。熱い感触が喉を越え、食道の壁をつたい、手際良く胃の底に下りていった。

ウィスキーをストレートで飲むとこうなる。

昔は新品だった夏の空のために、もうひと口ウィスキーを飲んだ。

悪くないスコッチ・ウィスキーだった。

そして空の方も見慣れてしまえばそれほど悪くなかった。

 

二杯目のウィスキーを飲み終えた時、僕は「いったい何故僕はここにいるんだろう?」という疑問に襲われた。

ウィスキーを飲んでいるとありがちな心の動きである。現実と虚構の境目が分からなくなってくる。そのときは気持ちがいいのだけれど、酔いがさめて後悔する。

 

僕はソファーから起きあがり、相棒の机の上にあったグラビア・ページのコピーを手に取り、ソファーの上に戻った。そしてウィスキーの味の残った氷をながめながら写真を二十秒ばかりじっと眺め、その写真が何を意味するのかを我慢強く考えてみた。

 

羊の数が三十二頭から三十三頭になった。

 

(上巻・104頁)

僕はソファーに横になったまま、再び羊の数に挑戦してみた。そしてそのまま昼下がりの二杯のウィスキー風の深い眠りに落ちた。

眠り込む前に、僕は一瞬新しいガール・フレンドの耳のことを考えた。

昼下がりにウィスキーを飲んで眠るというのはとても素敵な行為のように感じる。

いつか僕もガール・フレンドの耳のことを考えながら実行してみたい。

 

次にウィスキーが登場するのは「鼠からの手紙とその後日譚」で鼠からの頼みごとを果たすため、鼠の元彼女と会って話すときだった。

ホテルのラウンジがカクテル・アワーに入った。

(上巻・160頁)

「お酒でも飲みませんか?」

ウォッカをグレープ・フルーツで割ったのはなんだったかしら」

ソルティー・ドッグ」

僕はウェイターを呼んでソルティー・ドッグとカティー・サークオン・ザ・ロックを注文した。

鼠のことについて彼女は語る。

(下巻・162頁)

二十秒ばかりの沈黙のあとで、僕は彼女の話がもう終わっていることに気づいた。

僕はウィスキーの最後の一口を飲んでから、ポケットの中の鼠の手紙を取り出し、テーブルのまん中に置いた。

彼女はバッグに手紙をバッグにしまう。

僕は二本目の煙草に火を点け、二杯めのウィスキーを注文した。

二杯めのウィスキーというのは僕はいちばん好きだ。

一杯めのウィスキーでほっとした気分になり、

二杯めのウィスキーで頭がまともになる。

三杯めから先は味なんてしない。

ただ胃の中に流し込んでいるというだけのことだ。

うんうん。

 

それから「羊をめぐる冒険Ⅱ」がはじまる。

 

耳のきれいな彼女と北海道に行くことになる。

(下巻へつづく)

 

下巻は物語のクライマックスでウィスキーが登場する。

<鼠>が過ごしていた別荘にたどり着く。

耳のきれいな女の子は去る。

 

(下巻・140頁)

約束の一カ月はちょうど半分が過ぎ去ろうとしていた。

十月の第二週、都会がいちばん都会らしく見える季節だ。

何もなければおそらく僕は今ごろどこかのバーでオムレツでも食べながらウィスキーを飲んでいるに違いない。

良い季節の良い時刻、そして雨あがりの夕闇、かりっとしたかき割り氷とがっしりした一枚板のカウンター、穏やかな川のようにゆったりと流れる時間。

なんて素敵な時間の過ごし方だろう。僕もとびきり美味いオムレツを食べながらウィスキーを飲みたくなってきた。

 

 

やがて羊男がやってくる。

(下巻・148頁)

「酒が欲しいな」と羊男が言った。

僕は台所に行って半分ばかり残ったフォア・ローゼズの瓶をみつけ、グラスを二個と氷を持ってきた。

我々はそれぞれのオン・ザ・ロックを作り、乾杯もせずに飲んだ。

 

(下巻・150頁)

羊男は半分溶けた氷の上にとくとくとウィスキーを注ぎ、かきまわさずに一口飲んだ。

 

(下巻・152頁)

羊男は立ちあがって右の手のひらでテーブルをばんと叩いた。

ウィスキー・グラスが五センチばかり横にすべった。

僕はソファーに沈みこんだままウィスキーをなめた。

 

羊男とのやりとりはウィスキーによって演出された。

そして羊男は消えた。

(下巻・157頁)

しかしテーブルにはウィスキーの瓶とセブンスターの吸殻が残っていたし、向いのソファーには羊の毛が何本か付着していた。

 

(下巻・159頁)

それから三日が無為のうちに過ぎた。

何ひとつ起こらなかった。

羊男も姿を見せなかった。

僕は食事を作り、それを食べ、日が暮れるとウィスキーを飲んで眠った。

 

(下巻・162頁)

煙草はなかった。

そのかわりに僕は氷なしでウィスキーを飲んだ。

もしこんな風に一冬を過すとしたら、僕はアルコール中毒になってしまうかもしれない。もっとも家の中にはアルコール中毒になれるほどの量の酒はなかった。

ウィスキーが三本とブランデーが一本、それに缶ビールが十二ケース、それだけだ。たぶん鼠も僕と同じことを考えていたのだろう。

 

再び羊男の短い来訪

一人で過ごす時間

あることに気づく

(下巻・177頁)

僕は台所に行ってウィスキーの瓶とグラスを持って来て、五センチぶん飲んだ。ウィスキーを飲む以外は何も思いつけなかった。

 

鼠との邂逅と別れ

そしてエピローグ

(下巻・225頁)

僕はセーターを着て街に出て最初に目についたディスコティックに入り、ノン・ストップのソウル・ミュージックを聴きながらオン・ザ・ロックをダブルで三杯飲んだ。

それで少しまともになった。

 

異なる世界へ到達するのと戻ってくるのにウィスキーは利用されていたようだ。

精神に結びつく。

村上春樹とウィスキーvol.3「ノルウェイの森」

村上春樹の小説に登場するウィスキーを紹介する。

 

第三弾は「ノルウェイの森

 

1987年刊行、1991年文庫化。

村上春樹の長編5作目。

ベストセラーとなり映画化もされた作品。

 

21歳の頃に初めて読んだときは少し苦手意識があったけど、それから多くの生と死とSEXを経験して、再度読んでみると心のいろんなところが動かされることに気づく。

 

作品を通してウィスキーは死に近づいたときに登場している雰囲気がある。

 

直子の二十歳の誕生日を祝い、奇跡的なSEXを経て、突然の別れ、混乱する主人公・ワタナベ・トオルは肉体労働とウィスキーで気を紛らわせる。

(上巻・80頁)

僕は週に五日、運送屋で昼間働き、三日はレコード屋で夜番をやった。

そして仕事のない夜は部屋でウィスキーを飲みながら本を読んだ。

(上巻・82頁)

僕は一人で屋上に上ってウィスキーを飲み、俺はいったい何処に行こうとしているんだろうと思った。

 

そして直子から手紙が届いた。

 

 

次のウィスキー登場シーンは永沢さんと共に。

プレイボーイの永沢さん。ナンパをしてSEXをするのが得意な永沢さん。

しかしこの日は上手くいかない。

(上巻・149頁)

僕らは酔っ払わない程度にウィスキー・ソーダをちびちびすすりながら二時間近くそこにいた

誰とでも寝るという行為は自分をすり減らし、死に近づいている予感がする。

永沢さんのその後は書かれていなかったけど、幸福ではなかっただろう。

 

その後、京都の山奥で直子と会うことになり、数日を共に過ごして上巻は終わる。

 

下巻は直子のルームメイトのレイコさんの話からはじまる。

 

緑のお父さんのお見舞いに行く。キウリに海苔を巻いてポリポリと2本食べ、お父さんにも1本を食べさせてあげる。

その5日後にお父さんは亡くなる。

それ以来一週間、緑からの連絡はない。

(下巻・93頁)

僕はある夜、約束を果たすために緑のことを考えながらマスターベーションをしてみたのだったがどうもうまくいかなかった。仕方なく途中で直子に切りかえてみたのだが、直子のイメージも今回はあまり助けにならなかった。それでなんとなく馬鹿馬鹿しくなってやめてしまった。そしてウィスキーを飲んで、歯を磨いて寝た。

 

永沢さんは希望していた外務省の試験に受かった。

永沢さんの彼女のハツミさんと三人でちゃんとしたレストランに行って会食をしよう。就職祝いだよ。と誘われた。

やれやれ、それじゃキズキと直子のときとまったく同じじゃないか。と思いながら同席した。

話題は主に「男と女」のことだった。

(下巻・105頁)

ワインを飲んでしまうと永沢さんはもう一本注文し、自分のためにスコッチ・ウィスキーをダブルで頼んだ

直子のことが話題に出たが、僕はワインを飲んでごまかした。

(下巻・108頁)

「ほら、口が固いだろう」と三杯目のウィスキーを飲みながら永沢さんが言った。

 

ときどきすごく女の子と寝たくなる複雑な事情があるワタナベ。

ハツミさんはため息をつく。

 

メインの料理が運ばれてくる。永沢さんの前には鴨のロースト、僕とハツミさんの前には鱸の皿が置かれる。

 

(下巻・111頁)

永沢さんは鴨をナイフで切ってうまそうに食べ、ウィスキーを飲んだ。

僕はホウレン草を食べてみた。

ハツミさんは料理には手をつけなかった。

 

ハツミさんと付き合いながら誰とでも寝る永沢さんに静かに怒りをぶつけるハツミさん

「私は傷ついている」「どうして私だけじゃ足りないの?」

(下巻・113頁)

永沢さんはしばらく黙ってウィスキーのグラスを振っていた。

 

「真剣に話をするのは別の機会にした方が礼儀にかなっていると思うね」

それからしばらく我々は黙って食事をつづけた。僕は鱸をきれいに食べ、ハツミさんは半分残した。永沢さんはとっくに鴨を食べ終えて、まだウィスキーを飲みつづけていた。

ハツミさんはその後、永沢さんと別れ、数年後に自殺する。

 

 

緑と再会する。新宿のバーで飲む。

緑はトム・コリンズ、僕はウィスキー・ソーダを注文する。

(下巻・136頁)

僕はウィスキー・ソーダをひとくち飲み、緑のくわえたマルボロにマッチで火をつけてやった。

お父さんが亡くなってから過ごした緑の時間について共有し、ウィスキー・ソーダの二杯目を注文し、ピスタチオを食べた。

それからポルノ映画を観て、別のバーに移り、ウィスキーを飲み、ディスコに入って踊り、ウィスキー・コークを二杯飲んだ。

 

緑と直子

どちらも魅力的な女性だ

 

レイコさんから直子が不調だという手紙が届く。

(下巻・180頁)

僕は壁にもたれてぼんやりと天井を眺め、腹が減るとそのへんにあるものをかじり、水を飲み、哀しくなるとウィスキーを飲んで眠った。

 

直子のことが気がかりで、緑を傷つけてしまった。

緑に手紙を書こうとしたがうまく書けなかったので、直子に手紙を書いた。

(下巻・192頁)

僕はグラスに三センチくらいウィスキーを注ぎ、それをふた口で飲んでから眠った

 

緑とはまだ仲直りできていない。

 

アルバイト先のレストランでバイト仲間の美大生・伊東と仲良くなった。

一度彼のアパートに招待された。

(下巻・196頁)

我々は彼が父親のところから黙って持ってきたシーバス・リーガルを飲み、七輪でししゃもを焼いて食べ、ロベール・カサドゥシュの弾くモーツァルトのピアノ・コンチェルトを聴いた。

(下巻・197頁)

僕らは氷を入れずにストレートでシーバスを飲み、ししゃもがなくなってしまうと、キウリとセロリを細長く切って味噌をつけてかじった。

彼はモーツァルトの素晴らしさについて物静かにしゃべった。

モーツァルトのコンチェルトを聴いていると久しぶりに安らかな気持ちになることができた。

(下巻・198頁)

僕らは三日月を眺め、シーバス・リーガルを最後の一滴まで飲んだ。美味い酒だった。

 

緑と仲直りして、より好きになる。

直子とは違う愛情を感じる。

 

レイコさんと手紙のやり取りをする。

 

直子が死んでしまった。

 

放浪の旅に出る。

(下巻・223頁)

僕は歩き疲れた体を寝袋に包んで安ウィスキーをごくごく飲んで、すぐに寝てしまった。

(下巻・224頁)

流木を集めてたき火をし、魚屋で買ってきた干魚をあぶって食べた。そしてウィスキーを飲み、波の音に耳を澄ませながら直子のことを思った。

「死は生の対極にあるのではなく、我々の生のうちに潜んでいるのだ」

(下巻・227頁)

僕はたった一人でその夜の波音を聴き、風邪の音に耳を澄ませながら、来る日も来る日もじっとそんなことを考えていた。ウィスキーを何本も空にし、パンをかじり、水筒の水を飲み、髪を砂だらけにしながら初秋の海岸をリュックを背負って西へ西へと歩いた。

 

一カ月の旅を終え、レイコさんと会うことになった。

レイコさんはギターを弾き、直子を弔った。淋しくないお葬式。「ノルウェイの森」も弾いた。

(下巻・256頁)

ワインがなくなると、我々はウィスキーを飲んだ。

 

五十曲めにもう一度「ノルウェイの森」を弾いた。

五十曲弾いてしまうとレイコさんは手を休め、ウィスキーを飲んだ。

 

これでウィスキーの記述は終わる。

 

この後にレイコさんとSEXすることになるのだが、読者は賛否両論あるようだ。

僕はレイコさんとのSEXは必要だったと思う。それが直子の「淋しくないお葬式」の最後にふさわしい。直子とは彼女が二十歳の誕生日にしたのが最期となった。彼女の人生でただ一度きりの奇跡のようなSEXだった。それを埋め合わせるためにもレイコさんとの性交が必要だったのだろう。レイコさんもワタナベも新たな場所へ行くために。

 

 

皿洗いという家事について

皿洗いという家事について考える。

 

今日の晩ごはんは餃子だった。

出勤日だったので私だけ食べ始めるのが遅く、食べ終わるのも最後だった。

 

途中で嫁が風呂に入り、キッチンとダイニングテーブルは食器やホットプレートが放置されていた。

 

餃子とビールを済ませ、とりあえずキッチンのシンクに溜まっている食器を洗って片付けた。

 

嫁が風呂から上がったので、私が次に入った。

風呂のTVで甲子園の続きをみた。

福島の聖光学院が熊本の九州学院を下した。

 

風呂上がりに嫁から「皿洗いはどうするの?」と聞かれた。

 

「命令されればやるけど、できればやりたくない」と返した。

会社でも同様のことをやってきたから家でもやりたくないのだ。

 

放っておくと、嫁が皿を洗い出した。

子どもたちは家事の手伝いができるが皿洗いは極力避けるからだ。

家族全員皿は洗いたくないのだ。

 

子どもたちは洗濯物は手伝う。

皿洗いと何が違うのだろう?

私は洗濯物よりかは皿洗いのほうが好きだ。

何が違うのだろう?

家事の中で一番好きな料理と結びついているからかもしれない。

 

料理は創造性がある。

食欲という欲望にも関連している。

自分が食べたいものを作り、美味しいと実感するのが好きだ。それを他人に供した時に美味しいと言ってもらえるのも好きだ。

 

皿洗いはできて当たり前。

食べた人は食べ終わった皿のことなんて気にしていない。

気にするのは料理人だけ。

また美味しい料理を美味しそうに盛るために皿は存在しているのだ。

絵画のキャンバスと一緒だ。

料理を作る時に必要だから皿を洗うのだ。

創造の準備のために。

村上春樹とウィスキーvol.2「国境の南、太陽の西」

村上春樹の小説に登場するウィスキーを紹介する。

 

第二弾は「国境の南、太陽の西

 

1992年に刊行、1995年に文庫化された中編小説。

 

なんとも言えない魅力がある作品。

 

なかなか他人には伝わらない。

 

感想は個人差があるから。

 

僕は受け取ったものがとても多い。

 

ウィスキーの記述は少ない。

 

主人公のハジメくんが高校の頃に交際していたイズミという彼女について、話題が出た時だった。

ハジメくんが経営しているバーに来店した、高校時代の同級生から聞いた。

高校三年生の受験シーズンに彼女を傷つけて損ねてしまった。そして自分自身も損ねてしまった。

イズミはいま、豊橋にいる。そしていまも損なわれていることを。


(104頁)

彼はワイルド・ターキーオン・ザ・ロックのおかわりを注文した。

僕はウォッカギムレットを飲んでいた。

 

彼はあきらめたように頷いて、運ばれてきたウィスキーを一口飲んだ

 

(107頁)

彼はウィスキーのグラスをからからと音を立てて振った

 

(108頁)

彼はまた一口ウィスキーを飲んだ

 

(109頁)

彼はウィスキーを一口飲んで、それをそっとカウンターの上に置いた

 

そのようにして同級生から聞かされたイズミの話は終わった。

 

ハジメは同級生が帰ったあとも、カウンターで一人で酒を飲んでいた。

(111頁)

真っ暗な中でウィスキーを飲んだ。氷を出すのが面倒だったので、ストレートで飲んでいた

 

その後、島本さんと再会する。

小学生の頃に一緒にレコードをすり切れるほど聴いた島本さん。

ハジメと同じ「一人っこ」で、少し脚が不自由だった島本さん。

 

島本さんとの特別な出会いと別れを経て、物語はエピローグを迎える。

 

妻の有紀子はハジメの変化に気づく。

(267頁)

僕がうまく寝つけないまま台所のテーブルに座ってウィスキーを飲んでいると、彼女もグラスを持ってきて同じものを飲んだ

話しにくいことを話すときは、ウィスキーを飲みたくなる。

 

彼女は僕を見ていた。でも僕が何も言わないことがわかると、グラスを取ってウィスキーを一口だけ飲んだ


答えはイエスかノオかどちらかしかない。

 

中間は存在しない。

国境の南は存在するかもしれないが、太陽の西はたぶん存在しない。

 

何かが損なわれたとしても、新たな何かを選択することで別の新しい一日が始まるかもしれない。

そこにウィスキーはそっと寄り添う。