僕にとっては特別な空間だった。
むげんの蔵Barをお借りして3度目のウイスキー企画。
3ヶ月前から準備して、むげんの女将とも何度も打ち合わせをして、チラシを配って、Peatixのサイトをオープンして、集客して、11名の方が申し込んでくれた。
締め切り後にウイスキーとお土産のグラスを発注して、前日にその状態を確認した。
テキストを人数分用意した。A4・2枚分で8ページのコンテンツ。ホチキスではなく、マステで綴じる。
ウイスキーとチョコを置くための用紙も印刷。
チョコレートは明治 ザ・チョコレート
予定していた”力強い深み”が無かったので、近いフレーバーの”濃厚な深みと旨味”と”深遠なる旨味”の2種に変更した。どちらかがラフロイグに合えばいいと思って。好みは人それぞれだし。
開場の2時間前にむげんに到着。
玄関を開けると箱庭がかわいい。小さな金魚が泳いでる。
蔵前の庭も相変わらず美しい。
庭を眺める席も用意してある。
宿と蔵を結ぶ渡り廊下にも小さな庭がある。
蔵Barの入り口を開けると、鯨がいる。一角。
むげんの蔵Barは深海をイメージして造られたそうだ。
深淵なる場所で、ウイスキーとチョコを楽しむ。
節分の日だったので豆も用意した。ミックスナッツと伝六の豆菓子を鯨の器に盛りつける。
ウイスキーはそれぞれアロマが引き立つようにグラスを変える。
グレンエルギンは細身のチューリップグラス、グレンモーレンジは白ワイングラス、ラフロイグはウイスキーテイスティンググラス。グラスの上に紙の蓋をすることで揮発しやすい繊細なアロマを閉じ込める。飲む瞬間に仄かな香りを楽しんでもらう。
チョコレートやテキスト、お土産グラスなども配置して準備完了。
一部のお客さんがやってくる。初めて会う人たちばかり5名。
「どこから来たんですか?」
「どうやってこのイベントを知ったんですか?」
という問いから始まる。
京都、大阪、滋賀から来た人たち。
Peatixのサイトを見て来た人が多い。
最初にテキストを使ったレクチャーを20分ほどして、ウイスキーとチョコのマリアージュを楽しんでもらう。
お気に入りの組み合わせについてテイスティングノートに書いてもらう。
ウイスキーやバーに関する質問に対してお答えする。
ウイスキーを起点に会話を楽しむ。
1時間半はあっという間に過ぎた。
2部まで30分の休憩。
グラスを洗い、拭き、セッティング。チョコレートやお土産、テキストも置く。
今度は6名分。
30分でギリギリ間に合った。
ウイスキーを注ぎながらお客さんとお話する。
1部の時よりもリラックスしてテキストの説明をする。
おかわりにも応じる。
ハイボールも作る。
ウイスキーだけでなく、学びや小説、アートの話にもなる。
楽しい。
夜の梅とマッカランの組み合わせは最高だと開高健が言っていたらしい。
寿屋に勤めていた時にPR誌『洋酒天国』を創刊、後年、ウイスキーのテレビCMにも出演した開高は、酒好きとして知られます。そんな彼が好んだ「ウイスキーのおいしい飲み方」は、ちょっと意外なものでした。作家の藤森益弘氏はエッセイの中で、CMの撮影でカナダに出かけた際、開高から部屋に呼ばれ、とらやの小形羊羹「夜の梅」とスコットランドのシングルモルトウイスキー「マッカラン」を渡されたことを記しています。
甘党でもあった僕は羊羹も好物のひとつだったが、ウイスキーといっしょにかじったことはなかった。しかし、これがうまかった。何とも絶妙な甘さが口の中に残り、文字通り甘美な陶酔に浸してくれた。
新たな組み合わせを知る。それが楽しい。
だから次回はウイスキーと虎屋の羊羹のマリアージュを企画しようと思う。
夜の梅とマッカランだけでなく、僕なら他にどんなウイスキーと羊羹を組み合わせるだろうか?
そんなことを考えるだけで夜も眠れない。