キース・ジャレットの「ザ・ケルン・コンサート」誕生エピソードから始まるトーク
「新しいピアノを用意しなければ キースは演奏できない」
17歳のドイツ人少女がケルンオペラハウスで用意したピアノには問題があった。
高音域は耳障りで音量も小さく、ハンマーフェルトが擦り切れていた。黒鍵はひっかかるし、白鍵の音は外れていてペダルは使い物にならず、ピアノ自体も小さすぎた。
帰ろうと車に乗り込んだキース・ジャレット
雨の中ずぶ濡れになりながら懇願する少女
少女のために演奏することを決めたジャレット
ジャレットは高音域を避けて、中音域だけを使いながら心地よい音で奏でた。
さらにピアノの音量不足を補うため、低音にうなるような反復楽句をアレンジした。
また、椅子から立ち上がり体をツイストさせて、叩きつけるように演奏することで最後列の観客まで聞こえるよう、最善をつくした。
キース・ジャレットの「ザ・ケルン・コンサート」は僕の中で最も好きなジャズの一つだ。
とにかくリラックスしてウイスキーを飲みたい時によく聴いている。
そんな楽曲の隠れたエピソードを知ることができて、ますます好きになってしまう。
トークはその後、いくつかの心理学的事例をとりあげ、最後にロックンロールで締める。
デヴィット・ボウイやU2のプロデューサーとしても知られるブライアン・イーノはロックバンドを更に良くするために、あることをした。
邪魔をし、アルバム制作を混乱させる。
ブライアン・イーノがしていることは先日観たボヘミアン・ラプソディでクイーンのメンバーがしてきたことと同じだと思った。
映画の中で、クイーンの楽曲はフレディ1人で作ったのではなく、メンバーがアイデアを出し合い、わがままを言い合い、時に喧嘩しながら作っていった。
フレディがソロ活動に専念していた時は、そのような障害がなく、曲もヒットしなかった。
人々を感動させ熱狂させる音楽は、さまざまな障害を経て出来上がるのだなぁ、とラストの21分のライブを体感してあらためて分かった。