わかさスタジアムでのホークスvsオリックス戦が雨で中止になったので、たまたま途中にあった庶民に寄ってみることにした。
小雨が降る18時前。
入り口におっさんが2人くらいいた。
1人は帰り支度、1人は店の中へ。
入り口の前に立ち、中の店員と目が合う。
「1人?」
「1人」
ジェスチャーで交わすコミュニケーション。
「どうぞ」のジェスチャーを受け、中に入る。
入り口から2番目のカウンターに通される。
満席。
カウンターの隣の人との幅は狭く、パーソナルスペースは50cm以下。
「瓶ビール!」と声をかけると奥のバイトの女の子からリレー形式でビールとグラスを渡される。
ビールを受け取る際にカウンター越しに注文をする。
「お造り3種盛り合わせ、茄子の揚げ浸し、トマトスライス」
瓶ビールを飲みながら過ごす。
すぐに来る。
50cm以下のパーソナルスペースはすぐに埋まる。
茄子からお造り、トマトスライスをじっくりと楽しむ。
余裕がでてくると周りの会話が聞こえてくる。
「師匠!」
「師匠!きゅうり行くんすね!」
「師匠ー」
てな会話がカウンターの向こう側のスタッフから聞こえてくる。
どうやら右隣りの2人目は「師匠」と呼ばれる常連さんらしい。
やがて入れ替え戦。
僕の右隣りのおっちゃんが勘定を済ませ。師匠が右隣りに来る。
師匠と店員のやり取りをしばらく聞く。
やがて店が忙しくなり、店員は師匠に構っていられなくなる。
「なんで師匠なんですか?」
素朴な疑問を投げかける。
師匠は答える。
「なんでか知らんけど、彼ら(店員)が呼ぶんよ。彼らは天才やからね!」
ほぅ。天才とな。
「天才なんですね」
「そうなんよ。天才なんよ。だから僕は彼らの前になかなか立たれへんのよ。今日もようやく頑張ってこれたのよ。2ヶ月ぶりくらいかなー」
「師匠でもそんななんすねー」
「そうよ。彼らは天才やから僕みたいなゴミクズ以下の存在には眩しすぎて目の前に立たれへんのよ」
「じゃあ、久しぶりに勇気を奮い立ててこの店に来たということですか?」
「そうなんよ。彼らは天才やから」
そんな天才達に「師匠」って呼ばれてる還暦過ぎのおっさんとひとしきり話し、楽しい時間を過ごした。
師匠から引き継がれたきゅうりのぬか漬けを食べながら、庶民から天才は生まれるし、師匠が天才から尊敬されるんやなーと思いながら。