『銃・病原菌・鉄』
ジャレド・ダイアモンドの著書。
興味を持ったのは「ほぼ日」の対談だった。
ジャレド・ダイアモンドさんのクリアな視点 - ほぼ日刊イトイ新聞
そして、はてなブログでid:orangestarさんの分かりやすい解説で益々興味がわいた。
実際に読んでみた。
著者本人が本書を要約した一文が、本当に端的に本書をあらわしている。
歴史は、異なる人びとによって異なる経路をたどったが、それは、人びとのおかれた環境の差異によるものであって、人びとの生物学的な差異によるものではない
本書はこのことについて、食糧生産の起源を起点に、各大陸の人類の進化の過程を書き綴っている。
狩猟採集から農耕へと変化した理由は何か?
なぜ家畜は今の家畜に限定されているのか?
病原菌によって壊滅的な被害を受けたのがスペイン側でなくアメリカ原住民側だったのはなぜか?
そういった疑問に関して、様々な歴史的事実をもとに検証している。非常に丁寧に。
僕が本書を読み進めていくうちに抱いた疑問は、
「人間はなぜ戦争をするのか?」
ということだった。
しかし、その疑問には本書は明確な答え(あるいは仮説)を示していない。
しかし、人類の1万3000年の歴史の中で繰り広げられた、侵略、殺戮、征服の事例をみていくと、その答えらしきものが見えてきた。
人間が最初に野生植物を栽培することができたのは、今のトルコあたりだった。
人間が最初に野生動物を家畜化することができたのも、そのあたりだった。
そして、それぞれユーラシア大陸に急速に広がっていった。
しかし、アフリカ大陸、南北アメリカ大陸、オーストラリア大陸へ伝搬するのはずっと時間がかかった。
ユーラシア大陸以外の大陸でも独自に栽培や家畜化した動植物はあるけれど、その数はユーラシア大陸に比べてずっと少なかった。
そのために、ユーラシア大陸に住む人間は早い段階で食糧生産に従事しなくても良い人たちが増え、政治や技術を進化させていった。
政治や技術はユーラシア大陸の多様な地域で相互に刺激し合って進化していった。しかし、他の大陸はその多様性が少なく、砂漠など気候的に分断されてもいたため、交流が少なく、進化が遅れた。
また、家畜からもたらされる病原菌も多種多様なものを早くから感染していたため、他の大陸の人間たちよりも伝染病で絶滅する可能性が低くなった。
そのようにしてユーラシア大陸の人間たちは、他の大陸の人たちを、侵略、殺戮、征服していった。
では、なぜ、侵略するのか?
それは人口が増えすぎて、今いる土地だけでは生活が出来なくなったからだ。
新たな土地で食糧を生産し、自分に近しい人たちを養うためだ。
なぜ、殺戮するのか?
自分とは異なる考えを持つ人たちを生かしておくと、後々、自分たちの食糧が取られてしまう危険性が増すからだ。
なぜ、征服するのか?
征服した人たちを奴隷として活用することで、自分たちを養うための食糧をより楽に生産できるようになるからだ。
もちろん、「新たな武器を持ったらそれを使いたくなる」といった好奇心もあるだろう。他の理由もあるだろう。
でも、根元的には、自分が生きていくために、自分と異なる人(あるいは生物)を殺す必要があるのだ。
いまも人類は増え続けている。
地球の限りある資源(食糧となる有機物)を他の生物から奪いながら。
このまま人類が増え続けていけば、
他の動植物はどんどん絶滅していくだろう。
恐竜が絶滅したように、巨大隕石の衝突などで、人類が絶滅すれば、
ようやく他の生物が繁栄できるようになるのだろう。