「プロフェッショナル 仕事の流儀 バーテンダー・岸久」のアイリッシュコーヒーをブログで書いた。
GoogleとYahooの検索で上位に入ったようで、かなり読まれている。
「プロフェッショナル アイリッシュコーヒー」で検索するとトップに出てくる。
しかし、僕がこれまでに飲んだ中で一番感動したアイリッシュコーヒーは、岸さんのものよりも凄かった。まさにプロフェッショナルなアイリッシュコーヒーだった。
そのアイリッシュコーヒーはこれだ!
福岡市の大名にあるBAR倉吉。
なにかの記事で「アイリッシュコーヒーが有名」というのを読んで、九州の泊まりの出張が入った時に行った。
前泊して、ヤフオクドームへ行き、ホークスのナイター試合を観た。そこから15分ほど歩いて大濠公園を抜けて、学生の頃によく買い物に行ってた大名へ向かった。
大名は天神や中洲と違って、歓楽街がほとんどなく、セレクトショップやおしゃれなレストランがあり、学生や出張サラリーマンがほとんどいないから好きだ。
夜の大名はすごく静かで、BAR倉吉はそんな静かな大名にあるマンションの屋上にあった。
重厚な扉を開ける。
カウンターが目の前に見える。バーテンダーが一人。
「いらっしゃいませ」
僕以外の客はいなかった。
ジンフィズを頼む。
ジントフィズはバーの力量を試すのに最適なカクテルだ。
漫画「バーテンダー」でも紹介されていた、カクテル作りの基本的なテクニック(ステア、シェイク、ビルド)が見れるし、ジンやレモン、砂糖の選び方で味が変わってくるためセンスが問われるからだ。
倉吉のジンフィズはもちろん合格点だった。最も手間のかかるやり方を美しくこなし、ジンのセンスもいいし、味も素晴らしかった。
アイリッシュコーヒーが楽しみだった。
他のお客さんがやってきて、バーテンダーさんは少し忙しそうに立ち回っていた。
落ち着くのを待った。
そろそろかな。
「アイリッシュコーヒーをお願いします」
そこからは僕の想像を超えた世界だった。
実を言うと、アイリッシュコーヒーをバーで頼むのはこれが初めてだった。
事前につくり方はYoutubeで見ていた。
コーヒーを淹れておき、
砂糖を混ぜ、
コーヒーを注ぎ、
上に生クリームをのせる。
シャンパングラスのような背の高いグラスが用意された。底に角砂糖が入っていた。
アルコールランプが用意された。
小さなステンレス製の鍋が用意された。アイリッシュウイスキーが入っていた。
アルコールランプでウイスキーをフランベした。
炎がたっている小鍋を高く掲げた。バーテンダーさんの頭の位置くらいだろうか。
その高い位置から、ゆっくりとグラスにウイスキーを注いだ。
感嘆した。
青白い炎がタワーのようになり、煌きながらグラスに落ちていった。
そのときの様子がこれだ。
BAR倉吉のFacebookページより
全てのウイスキーを注ぎ終わり、
グラスを素早く揺すって砂糖をウイスキーに溶かした。バースプーンは使わなかった。
コーヒーを注ぎ、
その上にゆっくりと生クリームを浮かべた。
「熱いのでお気をつけください」
と目の前に差し出された。
完成したアイリッシュコーヒーは黒と白の層がきれいに分かれていた。
しばし、うっとりと見惚れた。
ゆっくりと飲んでみた。
熱っ!
そうか。フランベしたから熱いのか。
ちょっとずつ、ちびちびと飲んだ。
いつまでも温かく、コーヒーの香りとアイリッシュウイスキーの香りが続いた。
至極の時間を過ごした。
それ以来、いろんなバーでアイリッシュコーヒーを頼んだけど、BAR倉吉を超えるものはまだ出会ったことがない。
アイリッシュコーヒーは奥が深い。
コーヒーを極めるだけではダメだ。
カクテルを作る技術を磨くだけではダメだ。
コーヒーにもウイスキーにもカクテル技術にも全てに精通して、なおかつお客様を喜ばせる気持ちをのせてこそ、最高のアイリッシュコーヒーができるのだと思う。
僕もいつか、そんなアイリッシュコーヒーを創りたい。