この記事を読んで濱口秀司さんの本を買った。
濱口秀司さんに聞く「イノベーション人材の教育法」:
「教える」なんておこがましい。自分を殺せる刺客を作れ
https://diamond.jp/articles/-/206574
結構高かったけど、電子版しか無かったけど、非常に良かった。
僕は5、6年前から濱口さんのファンで、彼にウイスキーを飲んでもらったこともある。
買って半分ほど読んだ時に濱口さんからFacebookでメッセージもらった。
ハーバードビジネスレビュー
の論文集(電子版only)が発売になりました。新幹線など長時間移動
のお供にぜひ!(すぐ眠れます、笑)
印税は全額寄付だそうである。
https://diamond.jp/articles/-/206574
「論文集であれば、“本”ではない」という定義が僕の中にあったんですけど、頭の中では(これでよかったのか?)とグルグルしてしまって、(印税は寄付しよう、それならいいんだ)と自分を納得させました。
「SHIFT」には過去の濱口さんの考えやアイデアが詰まっている。
序文は「日本人イノベーション最強論」で始まる。
https://logmi.jp/business/articles/78432
第1回 イノベーションは誰でも起こせる
SHIFTという考えを使えば。
https://diamond.jp/articles/-/206593
第2回 SHIFT領域の考え方
SHIFTを起こす対象となるのはビジネスモデルとテクノロジー、コンシューマーエクスペリエンスの3領域である。
第3回 バイアスを破壊する
イノベーション発想のセオリー
本書ではイノベーティブな発想の3要件が記載されている。
①見たこと・聞いたことがない
あるアイデアをみんなに見てもらった瞬間に「あ、これ知ってる」と言われたらイノベーティブではない
②実行可能である
ビジネスである限り必要条件。例)iPhoneを五億台使って月まで到達させようPJは実現不可能
③議論を生む
すべての人が「すぐにでも商品化しよう」と賛成したら、常識の範囲を超えていないということである。明確に反対派がいなければならない。
第4回 問題の本質から強制発想する
コンセプトとはアイデアと切り口を合わせたもの
切り口とは論理的で構造的な見せ方のこと
切り口をセットにして語ることで、そのアイデアの強さを、論理的かつ構造的に示すことができ、相手の理解が得られやすくなる。
アイデアと切り口をセットで語る→具体と抽象を提示する
具体(アイデア)の完成度が低かったとしても、抽象(切り口)を説明することで斬新さが伝われば、後に完成度を高めていくことはできる。
抽象(切り口)を語るだけで、具体(アイデア)が伴っていなければ、アイデアを議論のテーブルに載せることすらできない。
イノベーション発想の3つの作法
①バイアスを構造化(可視化)する
アイデアの背景にある条件によって2軸で考える
「これはトレードオフか」という仮説を立てる
例)美味しい料理は高い、小型化すると機能が損なわれる
②バイアスのパターンを壊す
トレードオフ自体、みんなが思い込んでいるバイアスかもしれない
構造化するとバイアスを壊しやすくなる
③強制発想する
バイアスを壊してみて、別の道があると信じて強制発想すると新たな選択肢が浮かぶ
事例として、東京オリンピックの国立競技場建設問題を考察していた。
①総工費
②国民感情
③デザイン(ザハ設計の実現度、ザハらしさ)
実際には隈研吾のデザインに置き換わったが、濱口さんの提案も面白かった。なるほどそう考えるのかーという感じ。
第5〜7回はインターナルマーケティングについて解説されていた。実際の企業ではこれが最も重要だと思われる。しかし、僕にとっては実践が難しく感じてしまい、正直あまり興味が持てなかった。会社で偉くなりたければこの章を実直に取り組んだ方がいいのだろうけど。
第8〜10回はエクスターナルマーケティングについて解説されている。
これらも実践するのは難しく感じたが、バーを開く時にはじっくり考えておきたい。
第8回 ユーザーの心をいかにとらえるか
マーケティングには「スナイパー型(ライフルで一つの狙いを定めて撃ち抜く)」「ハンター型(散弾銃である程度の範囲を狙って何度か撃つ)」「フィッシャーマン型(投網で広範囲を捕まえる)」の3つの型がある。これまではスナイパー型が多かったが、これからは状況に合わせて使い分けると良いと書かれていた。
また、F100(最初の100人の顧客)へのアプローチをちゃんと設計されていないと、その後の拡大には繋がらない。でもやっぱり大事なのは次のことだろう。
言うまでもなく、最初の顧客を早期に確保したいがために表現したい世界観から妥協したり、安易に折衷した商品をつくることは本末転倒である
過度に安売りをしないほうが良いということだろう。
第9回 誰に何をどのように働きかけるか
ここではコールマンが火災報知器市場に進出して成功した事例と、オレゴン州にあるワイナリー「ユニオンワイン」の事例が紹介されていた。
ワインの事例は非常に興味深く、濱口さんが提案した「缶入りワイン」がどのようにして成功を収めたのかがロジカルに説明されていた。
既に確立されていたストーリー「ワーカーがつくる、ワーカーのためのワイン」に合うファンクションとデザインを具現化した。
さらに、プロモーションとして「鵜を動かすには、鵜飼を動かせ」という戦略を取り、ライバルのワイナリーに缶入りワインを広めてもらうというアプローチを設計した。
実はライバルのワイナリーとは「A or B」という競合関係ではなく、「A and B」という共存関係だということに気づくことがポイントなのだろう。
第10回 プライシングを動的にとらえる
ここではプライシングの3つの戦略について書かれている。
①オンザライン(値下げをしない商品)、②オフザライン(値下げをしてもいい商品)、そして③ブレーク(従来の価値構造を根本的に破壊する)である。
①と②は例えばBARであれば看板商品となるカクテルは絶対に値下げをせずブランド力を保つ。一方で大量に仕入れて安く提供できるFoodがあれば期間限定で安く提供して新規顧客を獲得していくというものだろう。
③のブレークについてはUberの事例が書かれていた。Uberは最初は高級ハイヤーで初期の顧客「F100」を獲得していった。その際のプライシングが絶妙だったというのだ。
第11回 自由度の高いフェーズにリソースをかける
この章は面白かった。
「一週間前の法則」
プロジェクトが何ヶ月、あるいは一年間続こうとも、一週間前になると「そろそろ結論を出さなくてはいけない」「結論を資料にまとめなければいけない」とみんなが思いは始める。そうやって、どんなプロジェクトは終わりを迎える。
なるほど。だったら自分が関心のないプロジェクトに巻き込まれたら一週間前になるまで何もしなくて良いのだな、と思った。
「90:10の法則」
イノベーティブなアイデアの90%は、プロジェクト全体のうち開始直後10%の期間内に思いついているという事実である。
これも重要な示唆だと思う。情報がたっぷりあると余計なバイアスが働いてしまうそうだ。関心のあるプロジェクトに参加したら初日にアイデアを思いつき、それを寝かせて一週間前になったら公表しよう。
第12回 個人が考え切ってこそ議論の質が上がる
これはほぼ日の対談でも語ってた。
チームで最高の答えを出すためには、
ひとりで責任を持って考え切ることが大事。
つまり、静かな時間が必要なんです。
https://www.1101.com/hamaguchihideshi/2017-11-27.html
本書では以下のように書かれている。
個人で考え切ったアイデアは、グループで議論するときに比較や統合がしやすい
これはワークショップの設計にも反映できると思った。グループワークをいざ始めると「ちょっと何言ってるかよく分からない」ことは多い。それを無くすことができるかもしれない。
第13回 学ぶ者が教える者を超えなければ意味がない
これは人気サッカー漫画「アオアシ」にも通ずる。
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1811/30/news009.htm
アオアシはビジネス本にもなってる。アオアシの考え方はやっぱりビジネスにも通じる要素が多いのだ。
第14回はQ&Aで、その後におまけがついている。
これも読み応えがあって面白い。
普通のデザイン思考ではイノベーションは起こせないということを解説している。
「SHIFT:イノベーションの作法」を読み終わって思うこととしては、これは複数人で読み解いた方がいろんな解釈が出て面白いだろうなーということ。
そのためにはABD読書法が最適なんだけど、電子版しかないので物理的に分割するのが出来ないのが残念。
まぁ色々試してみよう。