とある大学生向けにオンライン授業の講師をしました。
2日間のワークショップ設計と当日のファシリテーションを担当したので、その中身を紹介していきます。
前回はこちら
今回は、「1.発見…beの肩書き」について解説していきます。
beの肩書きとは、兼松佳宏さんが考案したワークショップで、
「キャリア教育」「組織開発」「まちづくり」にも活用されています。
私はこれまで本の内容を参考にしてbeの肩書きワークショップを開催していましたが、今回は事業企画という目的によりマッチしているver2.0の「パーパス型のbeの肩書き」を参考にしてワークショップを組み立てました。
パーパス型のbeの肩書きワークショップの流れは以下の時間配分としました。
①チェックイン 5分
②レクチャー 15分
③偏愛マップ 25分
④ストーリーテリング + フィードバック + メッセージカード + 贈呈式 60分
⑤チェックアウト 5分
①チェックインは簡単に、
・お名前は?
・どちらから?
・今日の期待は?
をZoomのチャット欄に書いてもらい、ファシリテーターの私がいくつかピックアップして読み上げる形としました。
②レクチャーの流れは以下です。
・beの肩書きとは
・勉強家との出会い
・beの肩書きを理解する3つのキーワード
①ユーダイモニア
②リフレーミング
③メタファー
・パーパス型のbeの肩書きとは
・モチーフは「みんなの○○係」
・「ことばで遊ぶ」くらいの軽い気持ちで
beの肩書きとは、
「私はこんな人です」ということの紹介であり、
社会に貢献できることの源泉=生きがいであり、
自分の幸せを最大化するもの=感謝で測るというものです。
仕事の名刺的なdoの肩書きと比べてみると違いがよくわかります。
勉強家との出会い
beの肩書きを考案した兼松佳宏さん(YOSH)はこんな人です。
1979年生まれ、2011年から5年間greenz.jp編集長。
16年に京都精華大学特任教員に着任後、21年「グリーンズの学校」編集長として復帰。
著書に『ソーシャルデザイン』『beの肩書き』、連載に「空海とソーシャルデザイン」など。
TEDxKobeに登壇され「beの肩書き」のお話をされたこともあります。
私は兼松さんのワークショップに何度も参加したことがあり、深い洞察と軽やかなファシリテーションに常に刺激を受けています。
兼松佳宏さんのbeの肩書き
beの肩書きは複数あるかもしれません。兼松さんの例を示します。
大学教員という立場だと、beの肩書きは「勉強家」
著述家という立場だと、beの肩書きは「ことばの人」
モデレーターという立場だと、beの肩書きは「WSできる哲学者」
お父さんという立場だと、beの肩書きは「喜劇俳優」
https://greenz.jp/2018/03/16/be_no_katagaki_01/
このように、たくさんの名刺・肩書き・役割をもっている人はそれぞれ関連するbeの肩書きが見つかるかもしれません。
beの肩書きを理解する3つのキーワード
キーワード①:ユーダイモニア
beの肩書きのでヒントとなるのが「ユーダイモニア」という言葉です。
古代ギリシャの哲学者・アリストテレスが提唱した概念であるユーダイモニアとは、
「個人的な充実のある活動を行なっているときに感じられる一連の経験」を意味します。
それは私たちが秘めている可能性を最大限に発揮しているときに感じられるものであり、「これが本当の私だ」という感覚を生み出す、とされています。
ユーダイモニアと対比される言葉はへドニアで、以下のような違いがあります。
ここで大事なのは、ヘドニア=悪ではないということです。
何もしたくないくらい疲れているときは、ヘドニアに浸るのも悪くないでしょう。
ヘドニアがユーダイモニアに転じることも大いにありえます。
大切なのはヘドニアに依存しすぎず、ユーダイモニアを忘れないことなのです。
みなさんにとってのユーダイモニアとへドニアは何が当てはまりそうでしょうか?
まずは趣味や家事で考えてみましょう。
キーワード②:リフレーミング
リフレーミングとは、
無意識下の解釈の枠組み(フレーム)に気づき、異なる捉え方を通じて新たな意味を構築することです。
目の前のコップに水が半分入っているとして、「半分しか入っていない」と思うか、「半分も入っている」と思うか、同じ出来事であっても受け取り方はずいぶん違うでしょう。
ずっと気になっていた短所やコンプレックスが、実は長所でありチャーミングポイントでもあります。
自分のあり方をパラフレーズ(言い換え)してくれる他者の存在が不可欠で、他者からの愛のあるフィードバックによってリフレーミングが起こりやすくなります。
ここで、リフレーミングクイズを出してみます。
以下の3つの言葉をリフレーミングで言い換えてみましょう。
・飽きっぽい
・恥ずかしがり屋
・消極的
いかがですか?何か思いつきましたか?
それでは答え的なものをお示しします。
・飽きっぽい
→好奇心が旺盛
・恥ずかしがり屋
→自分をよくしたいと願う、成長意欲がある
・消極的
→その慎重さによってチームの窮地を救っているのかも
自分では短所だと悲観していたことも、他人の愛のあるフィードバックにより素敵な長所になるかもしれません。思い切って家族や友達に聞いてみてはいかがでしょう。
キーワード③:メタファー
メタファーは日本語で隠喩(いんゆ)と言います。例として、白い肌をメタファーでは「雪の肌」と表現します。
メタファーはあるものに例えることで自分のことを外在化し、語り合うことを可能にします。
例えば、「芸人のような面白いトークができるbarの店主」であれば、「barの店主」は自分が選んだもの、「芸人のようなおもしろいトークができる」は他者からの強みのパラフレーズにあたります。
あくまでメタファーなので、言葉遊びかのような気持ちでやってみることが大事です。
参考:自分らしさが見えてくる「beの肩書き」ワークショップ
https://act.kindai.ac.jp/act_activity/story/6407.html
メタファーについて理解を深めるため2つの事例を紹介します。
メタファーの例①「カストーディアルキャスト」
ディズニーランドの清掃員のことです。
笑顔で清潔なパークを保つ掃除のエキスパートです。
「あなたがするのは、掃除ではなく掃除というショーだ。」とメタファーで表現され、バイトの中でも常にトップ3に入る人気キャストになりました。
メタファーの例②ごみ拾いSNS「ピリカ」
ごみ拾いをゲームのように楽しむことで海洋プラスチックの削減などに貢献しています。
パーパス型のbeの肩書きとは
beの肩書きにはアイデンティティ型とパーパス型の2つがあります。
アイデンティティ型のbeの肩書きは書籍化された時点のものでver1.0といえます。
「自分は社会の中でどうありたいのか?」を問い、自分の内側に重点を置いたもので、個人視点で考えます。
一方、パーパス型のbeの肩書きは書籍化後に進化したver2.0です。
「自分たちは社会に何を働きかけたいのか?」を問い、自分の外側に重点を置いたもので、組織視点で考えます。
前述の兼松さんの4つのbeの肩書きでいうと、
「ことばの人」や「WSできる哲学者」パーパス型といえるでしょう。
パーパス型のbeの肩書きはモチーフとして「〇〇係」を使うと考えやすいです。
私の場合は、お父さん的な立場でいうと「みんなの給食係」といえます。
私は家事の中で料理がもっとも得意です。休みの日や早く仕事が終わったときは晩ごはんを作って家族に食べさせています。
子どもたちには肉だけでなく魚や野菜もなるべく食べてほしいので、メインディッシュと副菜の組み合わせを考えて作ります。
そうして、子供たちから「ウマッ!」を引き出せると私にとっても歓びになります。
ということで、私のパーパス型のbeの肩書きは、
メインとサブを組み合わせ「ウマッ!」を引き出す『みんなの給食係』
となりました。
このように「〇〇係」とそれを形容する文章を組み合わせてbeの肩書きとすることで、他の人にもすぐに理解できる肩書きとなります。
家庭における家事だけでなく、仕事や学校で所属する組織でも組織を細分化していけば各自に割り当てられた係があると思います。それを〇〇係と言い換えればよいというわけです。
リフレーミングやメタファーを駆使して言葉で遊ぶくらいの気持ちで考えてみましょう。
〇〇係の例は以下の記事でも掲載されていますので参考にしてください。
以上でパーパス型のbeの肩書きレクチャーは終了です。
次回は偏愛マップのワークを解説します。