とある大学生向けにオンライン授業の講師をしました。
ワークショップの設計と当日のファシリテーションを担当したので、その中身を紹介します。
概要は以下のような感じです。
対象:大学1年から4年生
参加人数:14人(3チーム)
サポートスタッフ:5人
日程:2日間、10:00-17:30、Day1とDay2は1週間あける
やり方:Zoomでブレイクアウトルームを使いながらオンラインワークショップ形式
この授業前にSDGsのレクチャーがあり、各自どのSDGsテーマをやりたいか決めてもらっていたので、事前にチームが決まっていました。
まず、この2日間のゴールとして、以下を設定しました。
新規事業企画のフレームワーク「リーンキャンバス」をベースに事業ストーリーを作り、各チーム5分で発表
まずはオリエンテーションとして5分ほど解説しました。
最初に知っておいてほしいこととして、名著「アイデアのつくり方」から引用し、
組み合わせの大事さについて伝えました。
アイデアとは
既存の要素の新しい組み合わせ
以外の何ものでもない
新しい組み合わせを作り出す才能は
事物の関連性をみつけ出す才能
によって高められる
新規事業を考えるうえでも、この2つの考え方は大事だということをインプットしました。
次に、これから行う2つのワークについての繋がりについて解説。
Day1は主にbeの肩書きでチームビルディングを行います。Day1の後半からDay2にかけてはリーンキャンバスを使って事業企画を考えてもらいます。
一見関係なさそうな両者ですが、深く掘り下げると関連性がみつかるかもしれません。
説明的な視点では、
beの肩書きとは、名刺には書かれないその人の生き様や在り方を説明する肩書きのことです。
リーンキャンバスとは、新規事業を企画するときに役立つフレームワークです。
方法としては、
beの肩書きは、個人起点で掘り下げることですし、
リーンキャンバスは、顧客起点で掘り下げることです。
そして哲学的に考えれば、
beの肩書きは、私の在り方を問う行為であり、
リーンキャンバスは、あなたの在り方を問う行為となります。
少し飛躍しましたが、「あなた=顧客」と考えてもらえれば理解しやすいかと思います。
このように、井戸を掘るように深く深く掘り下げていけば、やがて水脈にぶつかり、2つの井戸が繋がっているのだ!と気づくのです。
トヨタの「なぜなぜ分析」(なぜ?を最低5回は繰り返し根本原因を探ること)にも似ていますが、私は村上春樹が好きなのでこの井戸理論を推します。
2日間のワークショップを設計するにあたり、AIの考え方を念頭において設計しました。
AIといっても人工知能のことではなく、
AI : Appreciative Inquiry(価値を見出す問いかけ) のことです。
詳細はこちらの本に書いていますが、
AIは、米国で開発された人材開発や組織活性化のアプローチの一つ。
ポジティブな問いや探求によって、個人と組織における強みや真価、成功要因を発見し、認め、それらの価値の可能性を最大限に活かした最も成果が上がる有効なしくみを生み出すためのプロセスです。
以下の4つのプロセスからなります。
1.発見…個人と組織の本当の強みや価値を発見する
2.理想…変革に向けて、組織の最高の可能性を自由に想像する
3.設計…より良い未来や目的などに向かって可能性を最大限に活かした組織の姿をデザインする
4.実行…達成に向けて、持続的に取り組む
それを今回のワークに当てはめてみると以下のようになります。
1.発見…beの肩書き、みんなの〇〇係×メンバー数
2.理想…チーム名を考える(選んだSDGsテーマ×メンバーの強み)
3.設計…リーンキャンバスを書いてみる
4.実行…リーンキャンバスをもとに事業ストーリーを作る
AIで大事な考え方として、ポジティブアプローチがあります。問題解決プロセスであるギャップアプローチとは反対のアプローチをしながら成果を出すというものです。
ギャップアプローチが、あるべき基準が外側からくるのに対し、ポジティブアプローチは、ありたい状態が内側からくるのです。
ポジティブアプローチは、強み・価値を発見し、どうありたいか最大の可能性を描き、現実的達成状態を共有化し、新しい取り組みを始めるのです。
詳細はこちらの絵を見てもらうと理解しやすいと思います。
ギャップアプローチが既存事業の問題点を解決していくのを得意とするのに対し、ポジティブアプローチは個人・組織の強みを活かして新規事業を企画するのに適しているので、今回のワークに当てはめやすいと考え、プロセスを取り入れています。
以上で前段の説明は終了です。
少し長くなったので一旦ここまでで区切り、
次回は「1.発見…beの肩書き」について解説していきます。