とある大学生向けにオンライン授業の講師をしました。
2日間のワークショップ設計と当日のファシリテーションを担当したので、その中身を紹介していきます。
前回はこちら
前回でリーンキャンバスのレクチャーとワーク、宿題をやってきてもらい、リーンキャンバスを書く準備が整いました。
しかし、共有作業してもらっていたグーグルスライドの状況を見ると、市場調査が苦手っぽい様子だったので、市場調査のコツについてレクチャーする時間を設けました。
それぞれの役割を意識してグループワークをしよう
最後のアンケートでグループワークでの役割について質問予定でしたが、ここで意識してもらおうと提示しました。
いろいろな役割を担ってみて、自分に向いてるかどうか確かめてください。みんながリーダーをやっても議論が破綻してしまいますし、書記やタイムキーパー(TK)も成果の質を上げるには必要な役割です。
そして、調査人も大事な役割です(次から説明します)
市場調査のコツ
私は会社に勤めだして17年、様々な仕事をしましたが、その中でも好きな事が市場調査でした。
自動車、IoT、猫、酒などあらゆる分野で市場調査をし、サクッと市場を把握するコツを掴んできました。
それは「キーワード選定 X 画像検索」です。
これはGoogle Chromeを使うとやりやすいのですが、以下のように特定の市場を調査していきます。
①統計情報で課題の概要をつかむ 「〇〇 統計」で画像検索
②さらにキーワードを追加して課題を絞り込む
③記事の中身を読み統計グラフの出典を見てデータの信頼性をチェックする
④出典元の情報も見てさらに理解を深める
⑤別のキーワードで①~④を再調査
それでは各チームが選んでいたテーマをピックアップして例を示します。
事例1.特別支援学校の例
①「特別支援学校 統計」で画像検索し、「進路」という課題をつかむ
②「特別支援学校 進路 統計」で画像検索、文科省の資料を見つける
③文科省の資料を読み「進路」の部分の出典を見てデータの信頼性をチェック
④今回の出典元は課題との関係性が薄く、文科省の資料で十分に課題把握できるためこの工程は割愛
文科省の資料「日本の特別支援教育の状況」のP145「卒業後の状況」を見て、
どんな障害を持った生徒の何(進学/就職/その他)の課題を解決するのか?
といった課題設定ができそう
このように市場調査から課題設定へ繋げてみました。
事例2.シングルマザーの例
①「シングルマザー 統計」で画像検索し、貧困脱出には転職して収入アップが必要では?という仮説を持つ
②「シングルマザー 転職 統計」で画像検索、仮説の裏付けになりそうな記事を読む
③記事の中身を読み統計グラフの出典を見てデータの信頼性をチェックする
④出典元の情報も見てさらに仮説に関連する内容を確認
・仕事を変えたい母は約3割
・変えたい理由の5割は収入がよくないから
⑤仮説は正しそうなので、さらにキーワードを変えて詳細調査してみる
このように仮説を立ててその検証をしつつ進めていくというやり方もあります。
生ごみ処理の例
①「生ごみ 統計」で画像検索し「食品ロス」という課題をつかむ
②「生ごみ 食品ロス 統計」で画像検索、他国との比較について注目
③記事の中身を読み統計グラフの出典を見てデータの信頼性をチェックする
④出典元の「OECD 2013」の中身を探し当てるのは労力がいるため今回は割愛
グラフを掲載している記事を読み込むとさらに課題が見えてくる
news.yahoo.co.jp・家庭系 46%、事業系 54%と、ほぼ半々
・生ごみの重量のうち水分が80%以上を占める
他国はどのように問題を解決しているのか?
どんな技術があれば解決できそうか?
などの新たな問いを得て、さらに調査する。
このように「キーワード選定 X 画像検索」で市場を把握し、仮説を立てて、課題を深めていくとリーンキャンバスの精度が上がっていくでしょう。
NPOでなくビジネスで考えてみる
あと、大事なポイントとして、今回はあくまでビジネスで考えてみましょうということを伝えました。
なぜなら、各チームが宿題で設定していたビジネスモデルが寄付型のものが多かったからです。それはNPOです。
「NPO」とは「Non-Profit Organization」の略で非営利団体のことを指します。
アメリカでは優秀な学生ほどNPOに就職するといわれています。それは、優秀な人しか務まらないほど、難しく、やりがいのある仕事として人気だからです。
単純に、ビジネスで儲けようと思ったらゲームのような娯楽性の高いもののほうが簡単でしょう。
SDGsのように社会課題的な取り組みを新規ビジネスとして儲けるには、新たな切り口や斬新なアイデアが必要で「組み合わせ」がカギとなります。
組み合わせの例としては、
「シングルマザー × ゲーム」
「生ごみ処理 × 豚さん」
「特別支援学校 × アート」
などです。
意外な組み合わせのほうがインパクトがあると思いますし、それを実現していくには斬新なアイデアが必要です。
また、このスライドを作っているときに出会ったイベントで良い事例があったので合わせて紹介しました。
https://kyoto100ninkaigivol6.peatix.com/
ゴミ処理のヒントとなるかもしれない事例紹介
シングルマザーの転職のヒントとなるかもしれない事例紹介
留学生をシングルマザーに変えればヒントとなることがたくさんあるような気がします。
特別支援学校の就職のヒントとなるかもしれない事例紹介
後日、この3名のプレゼンを聞きました。
事業の観点もそうですが、パーソナルな観点で非常に共感することが多かったです。
学生のみなさんにもWEBで市場調査をするだけでなく、第一線で課題解決に取り組んでいる人に話を聞くほうが、よっぽど為になると思いました。
若いうちから色々な経験をしてもらえるといいなぁ。
次回はリーンキャンバスの仕上げとプレゼン発表について、運営側のポイントを紹介したいと思います。